『月刊社労士 20184月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より  

 

テレワークは離れたという意味の『テレ』と、働くという意味の『ワーク』からなる造語です。始まりは、バブル経済の地価高騰を受け片道2時間以上の新幹線通勤を余儀なくされた大都市圏ワーカーらの新しい働き方からだそうです。

それから30年を経て、現在パソコン・スマートフォン等の端末やインターネットの普及による通信環境の劇的な進展で、テレワークは誰もが使えるツールになり、在宅勤務が浸透して来ました。また、少子高齢化・労働力不足の現代、時間と場所の制約のないテレワークは、仕事と育児や介護の両立を可能にし、子育てや介護のための離職防止に効果があると期待されています。

今回、テレワークを効果的に活用した新しい働き方について会報誌に記事が載っていましたので要旨をまとめてみました。

 

1.働き方改革実現会議

20173月に働き方改革実現会議がまとめた働き方改革実行計画では、柔軟な働き方を可能にする環境整備の手段としてテレワークが取りあげられました。柔軟な働き方を可能にするために、「テレワークの導入・推進」、「テレワークで働くフリーランスの支援」、「副業・兼業の推進」が政策目標にあがりました。

 

2.テレワークの特性

(1)フリーランス性

テレワークは顔を会わさず非同期で働く働き方であり、同じオフィスで以心伝心で働くことではありません。仕事の内容を文書化、相互に合意しなければならず、いわゆる職務記述書・ジョブディスクリプションを明確にしておく必要があります。

このことはワーカーをスペシャリストにして行きます。結果的にワーカーのキャリア形成を助け、企業の社内ワーカーから社外で働けるワーカーに変え、フリーランサー的な振る舞いを可能にします。

 

(2)割り込み性・パラレル性

テレワークは非同期で働く働き方なので、ワーカーに時間の使い方の裁量があります。非同期の働き方は仕事との合間についでに行うことで時間を効率的にして、結果として自身の自由に使える時間を増やしワークライフバランスを改善します。

 

3.テレワークの効果

テレワークは本業の合間に分刻みで別の企業に雇われ仕事をし、副業を可能にします。副業は転職をスムースにし、起業や家業の事業継承、リカレント教育を可能にするとし、期待されています。

高齢者や障害者、遠距離居住者、海外居住者、短時間労働者など誰でも働くことができ、一億総活躍社会の実現、職場のダイバーシティを高めます。また、介護や育児のために自然環境、良好な居住環境を求めて大都市圈から移住し、移住前と同じ仕事をすることを可能にします。

フリーランス的に振る舞うテレワーカーはコワーキングスペースに集まり、社内で得られない新しい人脈、新しい知を得て、クリエーションのヒントを得ます。コワーキングスペースはオープンイノベーションの拠点としても期待されます。

 

4.テレワークの課題

効果が期待される一方、解決しなければならない課題もあります。

 

 ・ICT等のハード的導入支援、労務管理等のソフト的導入支援を進め、企業側に導入を促す必要があります。

 ・従来の税制、社会福祉制度、労働政策、産業政策、国土計画等は根本的に改めなければならなくなります。

 ・ワーカーの企業への従属性を解放していき、将来はワーカー自身が労働時間や休息・休暇管理、健康管理を行わなければならなくなります。

 

 

どれも解決には沢山の人の知恵と必要な時間が掛かりますが、得られる効果はそれ以上のものだと思います。働き方が変われば人自身が変わり、想像もしない将来の夢にもつながるかも知れません。是非、課題を解決してテレワーク社会を実現したいものです。