『会報 20184月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

介護により従来どおり仕事ができず、離職せざるを得なくなる事態が社会問題化しており、政府は介護離職ゼロの実現に向けて、介護事業所の環境整備に取り組んでいます。介護離職軽減のためにはマネジメント改革が重要になりますが、従業員が介護離職に至る原因について整理し、介護離職を防止するための要点について解説した記事が会報に載っていましたので、要旨をまとめてみました。

今回は、介護離職の防止についてです。

 

7.介護離職の防止

(1)事前の心構え

6574歳の要介護等認定の割合は3%であるのに対し、75歳以上は約20%以上と急に割合が高くなります。現時点で介護の必要がない場合でも、75歳を一つの目安にあらかじめ準備を進めるよう声を掛けて行くことが効果的です。

 

(2)基礎知識

介護が突然に始まった時、最初に何をすればよいのかというマニュアルを用意し、初動でパニックにならない仕組みを用意します。

 

(3)介護休業の意味

介護休業は介護をするための休みではなく、社会サービスに組み込んで行く計画をするための休業であるという、育成休業と介護休業の役割の違いを何度も繰り返して伝えて行く必要があります。

 

(4)会社の制度

介護休業の利用を促進して行くことが大切です。介護している雇用者の15%強しか介護休業などの制度を利用していません。

2017年からの改正により年3回に分けての取得なども可能となりました。介護離職を予防するためにも積極的な活用が望まれます。

 

(5)離職後の生活

介護のために会社を一度辞めると再就職が難しく、親の年金に頼って生活する人が増えます。親の年金はその親が生きている間だけです。また、収入減というマイナス要素だけでなく、職場に必要な人材だというマネジャーからの強いメッセージが重要と考えます。

 

4.産業ソーシャルワーカーとの連携

増え続ける介護離職を予防して行くためには、その役割をマネジャーだけが担うには荷が重過ぎます。マネジメント業務が増えているマネジャーをサポートする役目として、今後は外部からの支援が求められて来ます。マネジャーへの個別対応は産業ソーシャルワーカーが担うことができます。マネジャーに代わり、部下の介護の問題、出産や子育ての両立問題、ガンなど疾病と病気との両立問題など、またマネジャー自身のマネジメントに関する相談、マネジャーの自身のワークライフに関する相談などに乗ることも可能です。

 

 

介護休業は介護をするための休みではなく、社会サービスに組み込んで行く計画をするための休業であるという定義は、わたしも誤解していました。○○休業というのは、そのための休業というように短絡的に考えるのではなく、本来の最終目的を見据えて制度を運用することが大切なんですね。