『会報 20184月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

介護により従来どおり仕事ができず、離職せざるを得なくなる事態が社会問題化しており、政府は介護離職ゼロの実現に向けて、介護事業所の環境整備に取り組んでいます。介護離職軽減のためにはマネジメント改革が重要になりますが、従業員が介護離職に至る原因について整理し、介護離職を防止するための要点について解説した記事が会報に載っていましたので、要旨をまとめてみました。

今回は、介護離職に至る原因についてです。

 

6.介護離職に至る原因

介護離職にはいくつかの原因があります。マネジャーはこうした原因を知ることが必要です。

 

(1)介護の突然性

介護は突然に訪れます。国民生活基礎調査によると、介護が必要となった理由は、脳血管障害、認知症、関節疾患、骨折・転倒、心疾患となり、これらにより、ある日突然に介護を迫られることになります。

この突然性により、冷静な状況把握ができなくなり、離職を考えるようになります。

 

(2)介護の準備不足

親が元気なうちから、弱くなった姿や寝込んで介護が必要な姿は想像したくありません。あらかじめ、制度を覚えたり、サービスを知るといった準備ができず、介護を求められる状況を迎えてから慌てて情報を集める場合がほとんどです。

情報がない中で、戸惑ううちに離職を考えてしまう場合があります。

 

(3)隠れ介護

会社や上司に伝えると、重要な仕事を任せてもらえない、昇進に影響するかも知れない、リストラ対象になるかも知れない、などの不安がよぎります。申告すべきかためらっているうちに、職場の理解や協力を得たり、会社の制度を利用したりする機会を失ってしまうと、離職に繋がり易くなってしまいます。

 

(4)自己介護

責任感が強いほど、親のことを人に任せたりサービスを使ったりしないで、自分で解決しようとします。自分が全ての介護を担わなくてはならないと思い詰めて離職に至る場合があります。

 

(5)介護分担

兄弟間などで介護を分担する場合、負担の大きい人が不満を持ち、家族間の揉め事に発展する場合があります。良かれと思って多くを担うと、それを当たり前と思われることが多く、インゲン関係に歪みが生じます。

こうした揉め事が煩わしくなり、離職によって解決しようとすることがあります。

 

 

次回は、介護離職の防止についてまとめます。