『会報 20181月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

今回は保育業界における労務管理の実務についてです。多くのメニューが用意されている雇用関係助成金を見ても、職場定着支援助成金の新メニューとして「保育労働者雇用管理制度助成コース」が創設される等、保育業界に対する雇用支援が注目されています。これはもちろん、昨今の保育施設や保育士の絶対数が足りず、保育希望者に対して十分な保育サービスが提供できていないという問題からです。

会報誌では、保育業界の労務管理について、社会的なニーズと特化された雇用関係助成金の新設に関する解説が特集されていましたので、要旨をまとめてみたいと思います。

今回は、課題解決のポイントについてです。

 

3.課題解決のポイント

課題解決のため、業務の見直しに助成金を活用することが挙げられます。保育事業は保健衛生業の分類されるため、一斉休憩の例外及び法定労働時間の特例(週44時間)が該当します。

他にも、不規則な勤務になりがちなシフト制、連休や長期休暇が取得し辛い担任制などもあり、心身疲労の蓄積によるメンタルヘルスケアのニーズも高まっています。全国の保育所の半数超で保育士のメンタルヘルスを巡るサポート体制が整っていないことが指摘されています。

人間関係でも、常に尊い命を預かり向き合う緊張感に加えて、クラスという狭い単位で通年同じメンバーで職務に従事する特殊性も労務管理上の課題です。小規模な園や一法人一園経営のケースでは、職制が固定的で、キャリアパスを明確に定めていても配属先や昇進ポストそのものがなく、運用上支障を生じがちです。この場合、例えば上昇型のパスではなく、ジョブローテーションを前提とした円環型のパスを構築する方法があります。

保育業界は、女性が多く、若年層が多いという特徴があります。このことから、保育労働者自身の両立支援ニーズも見落としてはならない点です。育児または介護、育児と介護のダブルケアに直面する可能性が高く、時間や勤務地を限定した多様な正社員制度を政府が後押ししています。


「処遇改善等加算」という公定価格を構成する加算の最適活用も考えられます。今年度から「処遇改善等加算Ⅱ」という、従来の加算とは別に新たに設けられた仕組みの導入により、非常に制度全体が複雑化しました。

基本となる考え方としては、保育労働者の福祉施設等における平均経験年数や在籍児童数などに応じて算定さえる加算額を原資として、原則開設年度の前年度を基準とし、毎年度の賃金改善に充当して行くこととされています。

長期勤続やそれに基づくキャリアアップ、保育の質の維持・向上のためにも、政府の推奨どおり月収ベースでの賃金改善、適正な改善額の設定などが求められます。その一環としての賃金テーブルの作成・改訂にあたっては、保育労働者雇用管理助成金も活用することができます。

育児や保育の現場では、単に働き方改革を標榜し、残業削減だけを目的とした支援の提案をしたとしても、必ずしも保育労働者の理解を得ることは難しいと言えます。子どもたちにとって最善の利益になるのか、これらの想いを受け止め、業種を取り巻く法制度とのバランスを保ちながら、最適解としてのより良い選択肢としての働き方を提案するという視点が求められます。

 

 

保育業界の労務管理というよりも、労務の大変さが先に理解できました。わたしのような一般サラリーマンとは比べものにならないぐらいの厳しさです。単刀直入に言って、先ずは賃金をもっと優遇できるといいのですが。分かり易いですからね。それから、次世代の子どもを健全に育てるという意味では、学校の先生も全く同じことが言えると思います。保育と同様、学校の教育職員についても労務面の改善を忘れずにケアしてほしいところです。