『会報 2017年10月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
総合労働相談所の相談事例になります。相談者は、大手食品メーカーの営業所に勤務する30歳代の男性Aさんです。Aさんの上司である営業所長のBは同じ30歳代ですが、勤務暦がAさんよりも長いという理由だけで所長に就いたような人間であり、本社の顔色ばかり気にして部下に対しては高圧的に接するタイプです。
顧客から商品に対するクレームがあり、その処理を巡ってAさんとBが対立することがあり、それ以降、BのAさんに対する言動が酷くなりました。Aさんにショックだったのは、同僚や部下たちから無視されるようになったことです。
Aさんは、こういった社内の状況に耐え切れず、精神的に追い込まれ体調を崩し、会社を休むようになりました。現在、年次有給休暇を消化中です。
1.相談内容
Aさんとしては、労働条件はよいし、仕事そのものは好きなので、できれば会社は辞めたくありません。退職するという方法は、Bから受けるパワハラに耐え兼ねて退職するということに納得がいかず、このまま泣き寝入りはしたくありません。また、会社が全く対応してくれないことも腑に落ちません。
2.アドバイス
大手食品メーカーということであれば、就業規則やパワハラ防止規程などが制定されている可能性が高いので、ハラスメントの相談窓口に関する事項などの情報を入手して、その内容を確認するのがよいと思います。パワハラの問題はデリケートな部分が多く、相談し辛いケースも多くありますが、こういった相談窓口なら相談に対して真摯に受け入れることや相談内容が漏れないようにする等の体制が整っているはずです。
一概にパワハラであると断定することは難しいですが、Bが「馬鹿野郎」「死ね」などの言動を執拗に繰り返していることはパワハラと認定される可能性が高く、会社はBに対して適切な対応を取らなければならない事象であると考えられます。
また、主治医に今回の経緯を話した上で、今後の治療などについて相談することも考えられます。会社の相応の対応を検討してもらうためにも、主治医から意見をもらえることが望まれます。会社の態度が煮え切らない場合には、斡旋の制度を利用する方法もあります。それにより、会社が社内で起きている問題を真摯に受け止める可能性もあります。いづれにしても
いずれにしても、会社への要求を明確にする必要があります。Bの謝罪、Bの異動、あるいは会社に対する相応の損害賠償の請求など、Bのパワハラに対して会社がどうしてくれるのかを要求すべきです。
3.対応
先ずは診断書を会社に提出し休職の手続きをし、職場に戻れる状態になるまで休養することです。体調が悪い状況で、重要な判断をすべきではありません。
会社には職場環境配慮義務があり、パワハラを防止する対策を取る義務がありますので、きちんと会社に相談すれば答えてくれるはずです。
種々のハラスメントがある中でも、パワハラは最も範囲が広く、その内容も様々なものがあり、その線引きが難しいとされています。パワハラかどうかの判断も重要ですが、その表層だけではなく、その奥にある問題や要因を洗い出して解決することが重要だと思います。