『月刊社労士 20178月号』(発行:社会保険労務士会連合会)より

 

有期労働契約で働く人は約1,400万人、その約3割が通算5年を超えて有期労働契約を反復更新しているそうです。平成254月に施行された改正労働契約法で規定されている無期転換ルールは、有期契約労働者の無期契約化を図り、雇用を安定化させることで、このような課題に対応するものです。

施行から5年が経過する平成304月以降、多くの有期契約労働者に無期転換申込権が発生することが見込まれます。まだ無期転換ルールへの対応方針を決めていない企業においては、少しでも早く検討を開始する必要があります。

今回、会報誌に厚労省からのお知らせとして無期転換ルールの対応に関する記事が載っていましたので、要旨をまとめました。

今回は、ルールの導入手順についてまとめます。

 

2.ルールの導入手順

4つのステップに分けて検討をして行くことが重要です。

 

ステップ1:雇用している有期契約労働者の就労実態を把握

有期規約労働者の人数、職務内容、月や週の労働時間、契約期間、更新回数、勤続年数、今後の働き方やキャリアに対する考え、無期転換申込権の発生時期などを確認します。

 

ステップ2:社内の仕事を整理し、無期転換後に任せる仕事を検討

人材の有効活用という観点から、有期契約労働者の無期転換後の役割を検討する必要があります。無期転換後の働き方としては

 

 ①無期契約労働者

 ②多様な正社員(勤務地や労働時間等の労働条件に制約がある正社員)

 ③いわゆる正社員(勤務地や労働時間等の労働条件に制約がない正社員)

 

3つが考えられます。無期転換後の社員にどのような仕事を任せるか検討します。

労働者本人の意向を踏まえつつ決定して行くことと同時に、その後の登用のあり方をあらかじめ想定しておくことも重要となります。

 

ステップ3:適用する労働条件を検討し、就業規則を作成

 

中長期的視点に立つ場合、有期契約労働者と労働条件が同一の無期契約労働者が増加する可能性があるため、雇用形態・労働条件を含めて本格的な無期転換申込みが開始する前に検討することが望ましいと考えられます。

また、無期転換者用の就業規則を作成した場合、これらの規定の対象となる社員を、正社員の就業規則の対象から除外しり必要がありますので、正社員の就業規則の見直しも必要です。

 

ステップ4:運用と改善

無期転換を円滑に進めるためには、制度の設計段階から労使のコミュニケーションを密に確保することが必要です。有期労働契約から無期労働契約への転換により、勤務地の限定性がなくなったり、時間外労働が発生したりするなど、働き方に変化が生じる場合があります。社員が十分に納得した上で無期転換申込権を行使することができるよう、丁寧な説明を心がけるとともに、必要に応じて改善を行なう必要があります。

 

3.厚労省の支援等

無期転換ポータルサイト」については、無期転換ルールについて多く寄せられている質問をQ&A形式にまとめて新たに掲載したほか、現在、有期労働契約で働いている方にも分かり易いホームページとなるよう情報の整理・追加などが行なわれました。

有期契約労働者を無期契約労働者や正社員に転換した場合などには、「キャリアアップ助成金」が支給されます。

モデル就業規則」については、小売業、飲食業、金融業、製造業の4種類が作成されていますが、さらに全業種共通のものが作成される予定です。

「労働契約等解説セミナー」や「コンサルティング」などについても、昨年度よりも回数を増やして実施されています。

厚労省では、引き続き様々な支援を行なっていく計画で、このような制度を活用して無期転換ルールの円滑な制度導入を図って行ことが望まれます。


 

 

とうとう、あと7カ月にまで近づいて来ました。厚労省では無期転換ポータルサイトを中心に様々な活用できる情報を公開していますので、まだこれから導入準備を始めるという関係者の方は是非一度参照してみるのがよいと思います。