『会報 20176月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より 

 

調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は約6割で、過去1年間においてメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業または退職した労働者は約10%いたとされています。そのうち、職場復帰した労働者は50%強です。精神疾患を持つ従業員にはしばしば遅刻や休業、業務遂行能力の低下などの労務問題が併存しています。今回、会誌でメンタルヘルス不調者に対する休復職の対応の実務をテーマに連載が始まりましたので、その要旨をまとめながら学んで行きたいと思います。

今回は、復職ガイドラインについてです。

 

1.精神疾病の難しさ

「うつ病は心の風邪」という表現があります。うつ病が希な病気でないこと、気の持ちようではなく、医療機関を受診する必要がある病気であるという一般化された点で意義がありましたが、一方で受け止め方に混乱も生じました。

2012年のアンケート調査では、メンタルヘルス疾患の復職率は平均約56%となっており、これは癌と同程度の率となっています。

 

2.メンタルヘルス対応のキーワード

メンタルヘルスで重要なキーワードは「疾病性」、「事例性」、「作業関連性」です。

疾病性とは病気の有無や診断名であり、医師が判断します。

事例性とは、業務を遂行するにおいて、本人もしくは周囲が困っていることを指します。メンタルヘルス対応では疾病性について、会社としては病気の有無以外は議論しないことが望ましく、事例性を明確にして解決の方策を探ることが重要です。

作業関連性とは、病気が業務によるものかという視点です。特に重要なのは、業務量の増大、長時間労働とハラスメントです。

 

3.職場復帰の手引き

行政は、精神疾患にかかった従業員の復職をスムーズにするために、事業場向けマニュアルとして、「心の健康問題により休業復帰支援の手引き」を示しており、5つに分けた各ステップで適切な対応をとることの重要性が記載されています。療養が不十分なままに復帰すると再休業率が高まってしまいます。

5つのステップは

 ①病気休業開始及び休業中のケア

 ②主治医による職場復帰可能性の判断

 ③職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

 ④最終的な職場復帰の決定

 ⑤職場復帰後のフォローアップ

の段階となっています。


 

4.休業中のケア

(1)事例性の発生

事例性をもって休業が開始されます。産業医面談を用意し、産業医から受診を勧奨することが望まれます。

(2)診断書

診断書に記載されている休業期間は飽くまでも目安です。診断書の休業期間は切らさないよう診断書の更新が必須となります。

(3)療養中の注意点

仕事と距離を置けるよう会社支給の携帯電話やPCはいったん会社で預かります。療養可能期間や傷病手当金などの生活保障について説明することが重要です。

(4)定期的な体調報告

何らかの形で体調の報告を本人にしてもらいます。産業医との療養中の面談も検討します。

 

 

今度、厚労省の「心の健康問題により休業復帰支援の手引き」についても調べてみようと思います。