『月刊社労士 20175月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

労働災害は昭和36年をピークに減少傾向にあり、平成27年には初めて1,000人を下回りました。建設業においては、平成27年に327人にまで減少しましたが、近年における急速な少子高齢化による労働災害の発生傾向も変わっていているそうです。今回、会報誌に高年齢労働者と高年齢労働者災害の特徴と具体的な安全衛生対策について解説された記事がありましたので内容をまとめてみました。

今回は、直接的・間接的対策の具体例についてです。

 

5.直接的対策の具体例

(1)墜落・転落防止対策

 ①機械設備等の改善、昇降設備・作業床の改善

 ・端部開口部には墜落防止設備を設ける。

 ・階段の最上段、最下段は色彩表示等で注意喚起する。

 ②作業方法の改善

 ・高所作業を地上作業に改善する。

(2)転倒災害防止対策

 ①機械設備等の改善

 ・通路の段差をなくし、平坦にして歩きやすくする。

 ・通路の勾配を緩くする。

 ②作業方法の改善

 ・高年齢労働者が移動の多い作業に就く時は、作業前に転倒予防体操を行なう。

(3)挟まれ・巻き込まれ災害防止対策

 ①機械設備等の改善

 ・重機等の作業半径への立入禁止措置を確実に行なう。

 ・溝、段差などがあれば事前に渡りなどを設ける。

 ②作業方法の改善

 ・加齢による機能低下が進むことを避ける理解納得させ、無理をしないことを心がける。

(4)重量物取扱い時の災害防止対策

 ①機械設備等の改善

 ・手押し車等を活用する。

 ・運搬物の大きさ、重量の面から改善する。

 ②作業方法の改善

 ・レイアウトを変更するなど、運搬距離の短縮を図る。

 

6.間接的対策の具体例

(1)安全衛生管理組織、管理規定、作業手順等の改善

 ・安全管理規定や作業手順書で高齢者に配慮した内容に見直します。

(2)安全衛生教育の実施

 ・送り出し教育や新規入場者教育の中で高年者の身体機能の変化や災害発生率などの教育をして安全意識を高めます。

(3)高年齢労働者の技能・知識を生かす職務への配慮

 ・高年齢労働者の豊富な知識や経験が心身機能の低下を補完している実態もあり、意欲を持たせる等の配慮を行ないます。

(4)健康の保持と健康障害防止についての配慮

 ・健康診断やその結果に基づく事後措置をしっかり行ない総合的な対処を実施します。

 

 

いろいろな直接的・間接的対策を施してはいますが、建設業はそのほとんどが1年未満の短い工期の有期事業であるため、安全衛生管理の実践は難しいところが多々あるようです。