『月刊社労士 20175月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

労働災害は昭和36年をピークに減少傾向にあり、平成27年には初めて1,000人を下回りました。建設業においては、平成27年に327人にまで減少しましたが、近年における急速な少子高齢化による労働災害の発生傾向も変わっていているそうです。今回、会報誌に高年齢労働者と高年齢労働者災害の特徴と具体的な安全衛生対策について解説された記事がありましたので内容をまとめてみました。

 

1.高齢化の現状

わが国の労働人口は平成10年をピークに減少傾向にある一方、50歳以上の労働者の割合は増加傾向が続き、特に建設就業者は、55歳以上が約3分の1に対して、29歳以下が10分の1程度と、高齢化が進行しています。

これからの高齢化比率を見通すと、高年齢労働者を扱いにくいものとして避けるのではなく、むしろ建設業の職場の重要な労働力として様々な安全衛生対策を講じて活用する方法を考えて行く必要があります。

 

2.加齢に伴う心身の変化と労働災害

高年齢労働者の労働災害防止を策定する場合、加齢に伴う心身機能を十分に考慮する必要があります高年齢者はふらつき易く、段差や階段などの認識において特に注意が必要と言えます。労働者1,000人あたり1年間に発生する死傷者数を年齢別に見ると、全産業において20歳から40歳まではほぼ横ばいで、50歳から急激に増加しています。特に建設業は、全産業よりも更に50歳以上の割合が高い傾向にあります。

 

3.事故の型別割合

 建設業のおける50歳以上の高齢者の労働災害の型別を見ると、「墜落・転落」が最も多く41.3%となっており、加齢に伴い様々な心身機能は低下し、労働災害の質も変化しています。この点を踏まえて、高年齢労働者の安全対策を考えて行く必要があります。

 

4.安全衛生対策の基本

 高年齢労働者の安全衛生対策には、加齢に伴う機能低下は個人差があるものの本人の自覚の有無に関係なく確実に忍び寄り、その労働災害防止は重要な課題となって来ています。機会設備等の改善や作業方法の改善などの直接的対策と、組織や基準の改善、教育、健康づくりなどの間接的対策があります。

 

 

次回は、直接的・間接的対策の具体例についてまとめます。