『月刊社労士 20175月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より


厚生年金基金からの脱退の事例

 

『月刊社労士』に毎号載せられている「社会保険審査会裁決事例」の内容を要約してご紹介します。

 

●主旨

請求人は、ある病院厚生年金基金の設立事業所で、請求人が運営する病院についての当該基金に対し、脱退届を提出しました。当該基金は、代議員会において本件脱退を審議し、脱退年月日の日付を脱退時特別掛金の額について条件を付し、脱退を承認議決しました。当該基金は請求人に対し、脱退時特別掛金を一括納付することを求める納入告知を行ないました。

請求人はこの原処分を不服として、審査会への再審査請求を行ないました。本件は、関係法令等の規定に照らし、原処分が適正・妥当なものと認められるかどうかがポイントとなります。

 

●裁決

本件脱退日は、請求人が主張する日付と認定するのが妥当であって、これを趣旨を異にする原処分は取消されました。

 

●経過

当該基金の設立事業所が同基金から脱退するためには、同基金の代議員会の議決を経た上で、当該基金からの脱退に係わる規約の変更について厚生労働大臣の許可を受けなければならないことは明らかです。また、資本関係や系列関係にない多数の設立事業者が共同で厚生年金保険に関する事業を行なう団体である総合型厚生年金基金にあっては、その加入や脱退について当該基金が可否を判断し、主務官庁がその判断の是非を監督するのは理に適っており、事務所が自由に本基金に出入りできるものではないことは明らかです。

よって、請求人が主張する設立事業所の脱退の自由は、法や本基金規約等の関係法令等の規定の範囲内で限定的に認められると解するのが相当です。

しかし、脱退日とはいつか、脱退日はどのように決定されるのかについての明確な定義・規定を置くことをせず、脱退の具体的事例に応じてその脱退日を事務所消滅日、代議員会議決日あるいは理事長の専決処分の日等と適宜決定し、そのような脱退日の具体的決定事例を設立事業所に周知して来なかった本基金の状況に鑑みれば、請求人が主張するように脱退時特別掛金の額についてその予見可能性はないというべきです。

従って、本基金に一定程度の自治の範囲が認められるとしても、本件脱退に係わる当該基金の対応は自治の範囲を逸脱した不適正・不当なものとみるのが相当と考えらます。

 

 

厚生年金基金にもいろんなところがあり、設立されている全ての基金がしっかり運営されているとは限りません。我々従業員が納めている掛金は集めると多額の資金となりますので、常に相互牽制して、適正に運営されていることをチェックしてほしいですね。