『会報 20175月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は約6割で、過去1年間においてメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業または退職した労働者は約10%いたとされています。そのうち、職場復帰した労働者は50%強です。精神疾患を持つ従業員にはしばしば遅刻や休業、業務遂行能力の低下などの労務問題が併存しています。今回、会誌でメンタルヘルス不調者に対する休復職の対応の実務をテーマに連載が始まりましたので、その要旨をまとめながら学んで行きたいと思います。

 

1.休復職制度の現状

休復職制度の明確化は、企業のメンタルヘルス対策で必須の内容と考えられますが、中小企業ではまだ一般的ではありません。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場のうち、職場復帰支援については18%程度の実施と、その割合は低くなっています。

休復職制度のメリットとしては

 ①制度として導入・運用することで、担当者の異動・退職等が発生した場合でも、対応にぶれが生じにくい

 ②休業時から復帰までの流れを従業員・会社双方が理解し易い

などが挙げられ、休業者が発生してから制度設計しても従業員への適用が困難です。

 

2.制度と運用

制度設計は重要ですが、適切な担当者の下での運用も必要となります。精神疾患で休業する従業員の対応における担当者は、上司、人事担当者、産業医です。運用面は産業医の選任・活躍が必須事項となります。

産業医の活躍については、選任届だけを提出し、活動実態が伴わない名義貸しの状況が存在することがあり、問題となっています。産業医の選任を行なう場合には、

 ・産業医資格があること

 ・定期的に会社に訪問できる医師であること

 ・健康診断後の就業判断、長時間労働者に対する面接指導を行えること

 ・精神疾患を持つ従業員の面談ができること

などを前提として、産業医契約を締結することが必要です。

産業医資格を持つ医師であっても、法律への理解や産業保健に関する制度設計を得意とする医師ばかりではありません。これらの業務は社労士が得意とする分野なので、社労士は産業医を始めとする産業保健専門職の意見を聞きながら、顧問先の意見を聞きながら顧問先の人事担当者と連携して、当該会社にあった制度を作って行くことが重要となります。


 

 

日本医師会の認定産業医証には5年の認定期限があるとのことです。こういうところを確認してすることも基本ですね。