『会報 20175月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

存続が難しくなっている厚生年金基金制度に替わり、企業年金はその選択肢の一つとなりますが、その種類は多様です。確定給付年金や確定拠出年金など、漢字ばかりの用語で、かつ一部の漢字が異なるだけでもその内容が全く異なるなど、素人には難しくて理解しようとするだけでも大変です。けれども年金には変わりありませんので、老後を考えると誰もに関係する重要なことです。

現在の企業年金とそれを取り巻く環境、そして今後の企業年金の在り方などについて解説した記事が会報に載っていましたので、その要旨をまとめてみました。

今回は、今後の企業年金の在り方についてです。

 

3.今後の企業年金の在り方

先ず、企業のニーズを図った上で、それに応えるために企業年金を導入する意義を考えるべきです。退職一時金制度で十分、もしくは退職金制度をなくし、全て報酬で支払うという考えもあります。

企業年金の意義には、掛金負担の平準化、一時金の年金化、税制優遇等があります。しかし、厚生年金基金や確定給付企業年金では、積立不足が発生すれば追加掛金の拠出が求められるので、企業型確定拠出年金や中退共でないと掛金負担の平準化は図りにくくなります。

企業年金の支給形態を見ると、厚生年金基金では給付利率が高く、一時金より年金のほうが優遇されていましたが、確定給付型企業年金では確定年金が増え、給付利率も低下し、一時金選択が75%、企業型確定拠出年金では9割以上が一時金を選択しています。

税制優遇は大きなメリットであり、事業主が拠出する掛金は損金算入することができます。従業員が拠出する掛金も所得控除の扱いになります。給付も一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象となります。しかし、その代わりに各種規制もあり、様々な給付設計が可能ではありますが、あくまでも規制下で設計する必要があります。例えば、企業型確定拠出年金は60歳まで原則給付することができないため、自己都合時や会社都合時の退職金としての使い方は難しくなります。また、加入者が運用指図するため、運用成果で給付が変動します。従業員のためを考えて、導入を躊躇する事業主も出て来ると考えられます。

確定給付企業年金、企業型確定拠出年金とも金融機関に運営を委託する必要があります。企業型確定拠出年金には加入者の投資教育もあり、その事務費用も考慮する必要が出て来ます。

 

 

導入するにはいろいろと考慮しなければならない点がいくつもありますが、重要なことは、公的年金と合わせた企業年金の給付面です。年金の目的はあくまで給付であり、その本質を見失わないことです。