『会報 2017年5月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
存続が難しくなっている厚生年金基金制度に替わり、企業年金はその選択肢の一つとなりますが、その種類は多様です。確定給付年金や確定拠出年金など、漢字ばかりの用語で、かつ一部の漢字が異なるだけでもその内容が全く異なるなど、素人には難しくて理解しようとするだけでも大変です。けれども年金には変わりありませんので、老後を考えると誰もに関係する重要なことです。
現在の企業年金とそれを取り巻く環境、そして今後の企業年金の在り方などについて解説した記事が会報に載っていましたので、その要旨をまとめてみました。
今回は、新しい企業年金についてです。
2.新しい企業年金
平成26年10月に社会保障審議会の下に企業年金部会が設置され、企業年金の在り方の議論が行われました。ポイントとしては、国民のライフコースの多様化に対応するために国民年金の第1号被保険者と企業年金のない会社員に限っていた個人型確定拠出年金の加入対象を、第3号被保険者や公務員にまで広げるという点です。また、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員、確定給付企業年金や厚生年金基金を導入して企業型確定拠出年金を導入していない企業の従業員も、平成29年から個人型確定拠出年金に加入できるようになりました。その結果、どのようなライフコースになったとしても、必ず老後保障のための自助努力手段が確保できることとなりました。これは、企業型確定拠出年金も、企業年金から個人年金に軸足を移して来たと見ることができます。
各金融機関は新しい運用商品や手数料の一定期間無料化等を打ち出し、普及に力を入れています。他にも企業年金の普及・拡大のために自社では費用や運営の負担面から企業年金を導入するのが難しい中小企業に対する規制緩和を盛り込むなど、予定されています。
確定給付企業年金についても、給付が確定しているという特徴を持つ“確定給付”ではなく、給付が変動するリスク分担型企業年金が、平成29年から導入できるようになりました。このリスク対応掛金の拠出を行なう仕組みを活用することで、将来発生するリスクを労使でどのように分担するかを予め労使同意により定めておくことも設計可能となります。
リスク分担型企業年金では、給付に対する財源のバランスが毎年度変化するため、毎年度の決算において給付を増減することにより財政の均衡を図ります。企業が追加拠出義務を実質的に負っていないのであれば、会計上は企業型確定拠出年金に分類され、貸借対照表に負債を計上する必要がないという点も導入のメリットとなります。
1つの確定給付企業年金内でリスク分担型と従来型の両方を実施することについては問題がありますが、原則としてリスク分担型と従来型の経理や資産を区分する等の措置を講じれば許容されます。
次回は、今後の企業年金の在り方についてまとめます。