『会報 20175月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

存続が難しくなっている厚生年金基金制度に替わり、企業年金はその選択肢の一つとなりますが、その種類は多様です。確定給付年金や確定拠出年金など、漢字ばかりの用語で、かつ一部の漢字が異なるだけでもその内容が全く異なるなど、素人には難しくて理解しようとするだけでも大変です。けれども年金には変わりありませんので、老後を考えると誰もに関係する重要なことです。

現在の企業年金とそれを取り巻く環境、そして今後の企業年金の在り方などについて解説した記事が会報に載っていましたので、その要旨をまとめてみました。

 

1.企業年金の沿革

企業年金を支えて来た厚生企業年金基金は、かつては資産額45兆円と企業年金の最大規模を誇っていましたが、現在ではその数が100件強までに減少してしまいました。厚生年金基金は厚生年金の給付の一部を代行して行なうところが独特であり、メリットも大きく、多くの企業が導入して来ました。しかし、近年の経済・運用環境の低迷なその環境変化に伴なう財政悪化等から、基金の運営が厳しくなって来ました。

平成12年、代行部分の債務を逃れるために、大企業を中心に厚生年金基金を代行返上し、新しくできた確定給付企業年金や企業型確定拠出年金に移行しました。さらに、AIJ投資顧問株式会社の年金消失事件をきっかけに、厚生年金基金制度の存廃が議論され、できるだけ他の企業年金制度への移行を促進しつつ一定期間をおいて廃止する方針が公表されました。

厚生年金基金だけでなく、適格退職年金制度も平成243月末に廃止され、その2割が確定給付企業年金、1割が企業型確定拠出年金に移行しました。しかし残りの7割は企業年金を選択しませんでした。

企業年金は、公的年金の補完的な役割を担うことが期待される制度であり、現在その中心は、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金です。確定給付企業年金は現在、最大の企業年金となっていますが、昨今減少が続いています。企業型確定拠出年金は、導入以来増加し、実施事業主数も加入者数もその数を順調に増やしています。しかしその規模は、適格退職年金や厚生年金基金のかつての規模には到達しておらず、発展途上の制度です。

企業型確定拠出年金は、掛金が非課税扱いで積み立てることができ、老後の備えには最適な制度ですが、60歳までは原則引き出すことができないので、もしもの時には活用できません。しかし、企業の財務負担を軽減する動きやライフコースの多様化に対応できるという利点もあることから、運用環境に左右される面もありはしますが、今後も増加する方向と見られます。

 


 

次回は、新しい企業年金についてまとめます。