今回読んだ本は、小松左京さんの「エスパイ」です。小松さんの本は最近読んでおらず、前回まで遡ると、2年以上前に「シナリオ版 さよならジュピター」 を読んで以来です。ただ、この「エスパイ」は映画化されていて、その主題歌だった尾崎紀世彦さんの「愛こそすべて」  は1年ほど前に取り上げました。小説のほうは確か高校生の頃に読んでいたのですが、その文庫本がどこかに行ってしまい、どうしたものかと困っていたところ、幸運にもブックオフで見つけることができました。当時のものではなく再刷されたハルキ文庫のものでしたが、読み直してみると随分とそのストーリーを忘れてしまっていることに気が付きました。何よりも、映画化されたものは小説の原作とは大きく違っていることでした。もちろん、原作の小説のほうが何倍も、いや10倍以上の桁違いに面白です。当時の技術では映画化が難しかった典型的な作品なのかも知れません。

 


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言い換えれば、映画化が可能なシナリオにストーリーが歪められてしまっているということなのですが、小松さんの書こうとしていたテーマ自体も変わってしまっているのはちょっと困ります。ただし、マリア役の由美かおるさんがヌードで踊らされてしまうシーンはしっかり映像化されていますので、映画のほうも一度は見てもよいのではないかと思います。ネットで検索してみてください。

 

今回この本を読み返して、もう一度現代版で映画化すると、もしかするとジェイソン・ボーンのような映画になるのかな、などと思いました。ジェイソン・ボーンシリーズは、ボーンが敵のエージェントと闘いながら世界各国を巡って行きますが、このエスパイも、ニューヨーク、バルセロナ、アンカラ、イスタンブール、ウィーン、ニュールンベルグ、ベルリン、そしてヨハネスブルグ、最後には衛星軌道上の人工衛星にまで行ってしまいます。この本は昭和39年に書かれましたから、半世紀以上も前に、ジェイソン・ボーンを超えるスパイ小説だったとも言えます。

小松さんの作品でお馴染みの科学技術面では、このエスパイでは“ワープ”が出て来ます。我々の世代では宇宙戦艦ヤマトのワープを最初に思い出すのですが、年代的にはこちらのエスパイのほうが先に出して来ている訳で、この点でも驚きです。小説では、敵が地下基地に出力5kWの原子力発電所を密かに建設し、生み出される電力全てを数十センチ四方の小さな箱状装置に集約させて空間を曲げ、出現・消失を繰り返してエスパイを翻弄します。ちなみにあの福島第一原発では最も小さい1号機の出力が46kWなので、発電量としてはそれほど大きな訳ではありませんから、空間歪曲装置とも呼べるこの箱状装置を作ることができれば、現代でもワープ現象を実際に起こすことができる訳です。小松さんが考えてから50年経ちましたが、現実の科学技術は未だそれに追いついていないんですね。残念です。

 

 



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