『会報 20171月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

企業組織には様々な雇用状況の社員がいます。また、個人や家庭環境なども加えれば、更に多様な社員が混在することになります。このような多様性を尊重し、活かす人事戦略がダイバーシティマネジメントです。仕事と育児・介護の両立支援のための労務管理としてダイバーシティマネジメントを理解する記事が会誌で連載されていますので、要旨をまとめてみました。

今回は、イクボスについてです。

 

1.イクボス

イクボスとは、

職場で共に働く部下・スタッフのライフ・ワーク・バランスを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる男性および女性上司のこと

です。育児をしている上司ではなく、また育児をしている社員に優しい上司でもありません。少し前に“イクメン”という言葉も知られるようになりましたが、若干紛らわしいかも知れません。

今後、多様な人材が活躍して行くために欠かせない視点であり、行政や多くの会社が賛同し、「イクボス宣言」を行ないつつあります。

 

2.ライフ・ワーク・バランス推進活動

昨年9月、東京都はイクボス宣言を行ない、開始から1カ月平均して20時半以降に退庁した職員は全職員の1割弱に減ったそうです。今後は、無駄な業務の炙り出しや体制の検証を行なうことで、真の働き方改革に繋がるよう期待されています。

 

3.イクボス式就業規則

就業規則は一般的には会社の秩序を守るために労使間のルールを明記する機能を果たしているという点で重要な意味を持ちます。イクボスに必要な要素である「社員のワーク・ライフ・バランスを考え、キャリアと成長を応援する」視点を就業規則に盛り込むことにより、社員の帰属意識が高まり、会社も社員もよい関係が築けるようになります。

 

4.男性の育児休業

男性の育児休業は、制度を柔軟な運用すれば、利用者を増やせると考えられます。

育児休業の男性の取得時期で需要の高いのは、産後8週間以内の時期と、働く妻の職場復帰の時期となっています。また、取得希望日から十分余裕を持って事前に相談するコースも多くなっています。もし、希望する時期にどうしてもその社員でなければ対応できない案件があるならば、出社を打診してみることもできます。一方的な出社命令は法的に問題がありますが、本人の自由意志の下、了解が得られるのであれば、育児休業中の懸念事項も減ります。

例えば、保育園への送迎から寝かしつけまで全て一人で行なっている家庭でも、週1日でも夫が妻に替わることで私生活も豊かになり、また仕事でも上を目指せるようになります。

 

 

若い世代が就業も私生活も大切にしつつキャリアを形成して行くためには、職場のキーパーソンである管理職の意識改革も重要な観点ということですね。ただし、イクボスの立場としても“自らも仕事と私生活を楽しむ”ことができることが元々の定義であり目指すべきところであることも忘れてはならないポイントです。