『月刊社労士 201612月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

無期転換ルールとは、平成254月に施行された労働契約法に規定されているルールで、労働契約が5年を超えた場合、有期契約労働者が申込みにより無期労働契約に転換できるものです。契約期間(5年)に関する通算のカウントは平成2541日以後に開始した契約が対象となりますので、平成304月以後に本格的な無期転換申込権の発生が見込まれます。

今回、会報誌でも厚労省からのお知らせが記事として載せられていましたので、その内容をまとめてみました。

今回は、雇止め法理と厚労省の支援策についてです。

 

3.雇止め法理

無期転換ルールの適用前に雇止めが発生することを懸念し、一定の場合には使用者の雇止めが認められないというルール(雇止め法理)が規定されています。

 ・過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同一視できると認められるもの

 ・労働者において、有期労働契約期間の満了時に当該契約が更新されると期待することについて合理的な理由があると認められるもの

 

雇止め法理が適用されるためには、労働者からの申込みが必要です。使用者からの雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が伝わるものであればなんでも構わないとされています。

 

4.厚労省の支援策

厚労省では、無期転換ルールの周知や企業が取り組む際の支援として、8つの支援策を掲げています。

①「無期転換ポータルサイト」を開設し、無期転換ルールの概要や先進的な取組みを行なっている企業の事例を紹介

②無期転換制度の導入手順などを紹介するハンドブックを新たに作成

③正社員化などを行なった事業主に対するキャリアアップ助成金を拡充

④無期転換ルールも含めた「労働契約等解説セミナー」を全国で208回開催

⑤無期転換制度や「多様な正社員」の導入を検討する企業へのコンサルティングを実施

⑥無期転換制度や「多様な正社員制度」の導入の参考となるモデル就業規則を作成

⑦無期転換ルールや「多様な正社員制度」についてのシンポジウムを新たに開催

⑧都道府県労働局に雇用環境・均等部(室)を新設し、専門の相談員を配置

 

無期転換ハンドブックは、実際の導入手順について段階に分けて説明されており、使い易さを念頭に作成されています。このハンドブックは、無期転換ポータルサイトにも掲載されております。また、無期転換ルールや多様な正社員に関するセミナーやシンポジウムの案内も掲載されています。

 

 

良好な労使関係を築いて行くためにも、雇止めに対しては慎重な対応が求められます。今からでもしっかりと準備を始めて、単なる法令対応に留まらず、企業として持っている人材という経営資源を活用し、また労働者にとってもその労働意欲と能力を高められる機会として捉えることが大切ですね。