『月刊社労士 201612月号』(発行:社会保険労務士会連合会)より

 

労働力人口が減少して来ているわが国では、労働力の活用と向上が求められています。健康度の高い労働者による生産性の高い職場づくりを目的とした経営の一部としての活動にも視野の拡大が求められている訳です。このような状況を踏まえて、会報誌でもこれからのメンタルヘルスのあり方を考察する記事の特集が組まれています。またいつもの如く、要旨をまとめながら学んで行こうと思います。

今回は、ポジティブ・メンタルヘルスにおける中小企業が取り組む際のポイントについてです。

 

1.「ひと」と「健康」を大切にする

事業所規模が小さい企業ほど一人の従業員が体調を崩すことによる企業活動への影響が大きくなります。経営者は、従業員の健康をコストではなく経営資源と考える発想の転換が必要とされます。

 

2.日頃の経営活動の中にメンタルヘルス活動を盛り込む

事業所規模が小さい中小企業では、専任の産業保健スタッフを雇用することが難しいので、メンタルヘルス活動を経営活動から切り離すのではなく、経営活動に盛り込むといった発想の転換が必要とされます。こうした活動では、従業員の強み(個人資源)や組織の強み(組織資源)をいかに伸ばして行くかがポイントとなります。

 

3.実行可能な活動から積み上げる

活性化対策に向けての動機づけを高めるには、“できること”を“できることから”積み上げて行くことが重要です。これまでに効果的だった対策を強化する視点、他社のよい事例を自社に取り入れる視点も併せて持つことがポイントです。

 

4.トップダウンとボトムアップの対策を組み合わせる

経営者がトップダウンで行なうだけでは効果は不十分です。職場の強みも弱みも最もよく知っているのは、そこで働く従業員ですから、職場の活性化にはそこで働く従業員の関与が必要となります。

 

5.組織や個人が持つ「強み」を強化する対策を行なう

弱みに直面し続けるにはエネルギーが必要で、途中で挫折することが多く、強みは何か、その強みを伸ばすために何ができるかという視点から活動を始めるほうが取組みへの動機づけも上がり、その取組みも長続きします。

 

6.目標志向型の対策を行なう

いわゆる「問題追求型」の対策にばかり注力していると、やがてその問題発生に関わった犯人探しが始まります。自分たちの組織をどのようにしたいのか? という将来の目標を共有し、その目標に向けて組織内のメンバーが共に対策を行なう状況が理想的です。

 

 

最近、特に長時間労働などの労働環境に関する問題が社会現象となって大きく取り上げられています。メンタルヘルスもその一つとして、今後は更に注目されることになります。うちの会社でもこれら6つのポイントを踏まえて具体的な施策を全社的に展開してほしいと思います。