『会報 2016年12月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
先週、兼業・副業に関する検討として、兼業・副業の問題を労働法の観点から検討した会報の記事を紹介しました。政府は「働き方改革実現会議」を開催し、働き方の改革を強く推し進めようとしています。
同一労働同一賃金や長時間労働の是正などはニュースに取り上げられる機会が多いですが、兼業・副業もまた柔軟な働き方として重要となって来ます。今回は、再び会報の記事から、兼業を導入することの課題とともに導入する際のポイントについてまとめてみました。
今回は、引き続き導入する際の課題と留意点についてです。
(4)雇用保険
①兼業・副業の場合の加入要件
雇用保険の場合は、被保険者となっている会社でのみ雇用保険料が発生します。労災の場合は本業先・兼業先それぞれの会社の賃金に基づき保険料を支払う必要がありますので、この面では規定が異なります。
従って、失業等の給付の基になる基本手当日額は、被保険者となっている会社の賃金のみから算出されます。
②失業手当受給時の留意点
本業先の会社を退職し、失業手当の受給資格が発生した場合であっても、兼業先の会社の労働時間によっては就職した日と見倣され、基本手当が不支給となる日があります。また、収入額によっては不支給あるいは減額となる可能性があり、注意が必要です。
③兼業・副業における課題
週の所定労働時間が20時間未満の会社2社で働いていた人が一方の会社を退職した場合、現在では失業手当給付の対象となりませんが、労働時間の合算値で判断しなくてよいのかという課題があります。また、複数の会社で働いている人がその内の1社を退職した場合の判断方法はどうするのか、なども明確にする必要があります。
(5)社会保険
兼業先で社会保険の加入要件を満たした場合は、所定の手続きが発生します。
①加入要件
1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
短時間労働者:
・週の所定労働時間が20時間以上あること
・雇用期間が1年以上見込まれていること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと
・常時501人以上の企業に勤めていること
②兼業開始時の留意点
提出した報酬月額に基づいてそれぞれの会社に保険料が請求されます。傷病手当金は、それぞれの会社の報酬月額の合算値に基づいて支給されます。
次回は、導入手順についてまとめます。