先週、企業における長時間労働やストレスの増大などの懸念される状況が見られる中で、注目されて来ている企業の社会的責任(CSR)に関する記事を、会誌から取り上げて紹介しました。社会的責任(CSR)については以前から聞いたことのあるキーワードですが、“労働”という文字がついた場合のCSRとはどういうものなのか、記事の要旨をまとめつつも今イチ、理解ができていませんでした。

それで、今回は厚労省のホームページから労働CSRに関する記事を探して来ました。厚労省は、企業が労働に関するCSRを推進するための環境整備などについて以前から調査・検討を行なっており、これは2008年に報告された「労働に関するCSR推進研究会報告書」です。今回はこの報告書の要旨をまとめながら労働CSRについて理解しようと思います。厚労省のホームページでは、以下のURLに公開されています。

 

 厚労省 - 労働に関するCSR推進研究会報告書


 

今回は、情報開示のあり方と今後の取組についてまとめます。

 

5.情報開示のあり方

研究会では、情報開示のあり方について次のとおり当面の考え方を整理しました。

CSRは、多様なステークホルダーとのコミュニケーションを通じて実現されるものであり、企業がCSRに関連する情報をあらかじめ自主的に開示することは、ステークホルダーとの対話の第一段階となる。

②労働CSRの最も重要なステークホルダーである従業員とのステークホルダーエンゲージメントの観点からは、従業員に対する情報開示は特に重要である。

③労働CSRに積極的に取組を行う企業が、市場において、投資家、消費者や求職者等から正当に評価されるようにしていくことは社会的にも有益である。こうした正当な評価に基づく選択による好循環を作り出していくためには、その前提条件として、企業の情報開示が必要である。

④自主点検チェック項目は、社会報告書に盛り込む情報開示項目として活用することも念頭に置いて作成したものである。

⑤一方で、労働CSRしてどの項目に取り組むか、優先順位をどうするかは、規模や業種の異なる様々な各企業が、これまでの取組状況や今後の取組方針などを考慮しつつ、ステークホルダーとの対話を図りながら、各企業が自主的・主体的に判断すべきものである。

そこで、情報開示項目については、開示することが望ましい項目を一律に示すのではなく、自主点検チェック項目に掲げた項目を参考にしながら、各企業が実情に応じた情報開示を行うべきと整理しました。

 

6.今後の取組

研究会では自主点検チェック項目を作成し、情報開示のあり方等について検討を行ないました。今後、更にこうしたツールの活用により、各企業の労働CSRの取組を実効あるものとしていくためには、企業のトップや推進部局のみならず、現場までCSRの取組が浸透するような組織体制を構築するとともに、抽出された課題を的確に改善につなげていくための適切なマネージメントが必要となります。

このため、今後は労働CSRを推進するための企業内のマネージメント態勢について、各企業における実態を把握した上で、各企業の実情に応じたマネージメント手法のあり方について検討することが期待されます。

 

 

次回は仕事と生活の調和が実現した社会の姿についてまとめます。