『会報 201611月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

企業組織には様々な雇用状況の社員がいます。また、個人や家庭環境なども加えれば、更に多様な社員が混在することになります。このような多様性を尊重し、活かす人事戦略がダイバーシティマネジメントです。仕事と育児・介護の両立支援のための労務管理としてダイバーシティマネジメントを理解する記事が先々月の会誌から連載されていますので、要旨をまとめてみました。

今回は、仕事と介護の両立支援についてです。

 

1.介護離職の影響

介護を理由に離職する人は年間200万人とも言われており、その4人に1人が課長以上の役職に就いていました。これでは、会社の中核を担う人材が次々に辞めていくことになり兼ねません。また、社会にとっては、税や社会保険料を負担して社会保障を支えている就労者が減ってしまうという損失を意味しています。

少子高齢化により、今後親の介護は誰にとっても直面することですので、両立し易い環境を作ることが必要で、そのためには一人で背負わず周りに相談することが大切になります。周囲が理解してこそ、職場全体でどういう支援ができるのかを考えるきっかけになります。

 

2.仕事と介護の両立

介護を機に離職してしまう事例で多いのは、介護について考えたことがなく、また普段から頼れる親戚や近所の人間関係が築けていなかったために、介護に直面した時にどの様に対応したらよいのか分からないというケースです。

その様にならないためにも、介護・福祉の制度やサービスを利用することと、家族・地域・職場や介護に関わる人々の円滑なコミュニケーションをとることがポイントになります。

 

3.公共サービスの利用

介護に対する認識を、離職して専念する介護から、介護に関わる専門化や地域の人々との協力の下、仕事と両立して行く介護へと、変えて行くことが求められます。

介護保険のサービスを利用するには、先ず自治体の窓口に申し込みをします、認定までに1カ月近くかかるので注意が必要です。

介護保険のサービスの他、適宜自治体のサービスを加えたり、地域の知人やボランティアの協力もあれば、仕事と介護の両立がし易くなります。

 

 

次回は、会社制度の活用についてまとめます。