『会報 201611月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

今回の労働判例は、役職定年制の導入に伴って賃金を毎年減額するという就業規則の変更について、その合理性が認められず無効となるかどうか、変更に労働者の同意があったかどうか、などが問題となった事案です。

就業規則の変更については合理性が認められず無効とされましたが、個別に労働者が同意したと認められる時、変更は有効であり、その労働者に適用されるとされました。特に注目すべき点は、労働者の同意の有無について、どのような基準によって判断されるのかにあります。

 

1.概要

被告の信用金庫は

 ・役職定年年齢(55歳)に到達した日以後、専門職または専任職とする

 ・手当は、役職定年時の資格職位に応じて、専門職等手当として支給する

 ・専門職等手当は、支給調整として毎年10%の割合で給与を削減し、60歳では削減率が50%となる

といった役職定年制を導入し、就業規則を変更しました。

信用金庫側は説明会を開催し、意見書を提出するよう指示しました。その結果、導入について異議がない旨の書面が提出されましたが、一部の職員からは疑問や反対意見が出されました。

退職した原告らは、役職定年制導入に伴う就業規則の変更は無効であると主張し、さらに給与や雇用保険の基本手当が少なくなったとして差額の支払いを損害賠償請求しました。

争点は、終業規則の不利益変更の効力、就業規則の変更について原告らの個別の同意があったか、役職定年制が適用されなった場合の給与等と実際に支払われた金額との差額の支払い、雇用保険に係わる損害賠償請求が認められるかにあります。

同意の有無について、原告らの

① X1X2については、役職定年制規程を導入することに係わる意見書として、異議のない旨を記載したものを提出した。

② X3については、職員代表であったOに対して、同意書を提出したらどうかという趣旨の発言をした。

③ X1ら以外の原告については、役職定年制の導入について積極的に反対の意見を表明することなく、変更後の給与等を受け取っていた。

というような事情があり、これらを同意があったと見ることができるかどうかが問題となります。

 

 

次回は、判決の要旨についてまとめます。