『月刊社労士 20169月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

個別労働紛争解決システムについては、厚労省で検討会が組織され、

 ・既に制度化されている雇用終了をめぐる紛争等の多様な個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策

 ・雇用無効時における金銭救済制度の在り方とその必要性

が検討項目に挙げられています。

今回、会誌にこれらの検討課題に関する解説が載っていましたので、その要旨をまとめながら勉強してみました。

 

1.システムの概要と課題

個別労働紛争解決システムには、次の5点が要請されています。

①迅速な解決

②当事者の自主性の尊重

③紛争の実情に即した解決

④専門性の尊重

⑤権利義務関係に即した解決

企業外の公的な個別労働紛争解決システムは、裁判所における紛争解決と裁判外紛争解決に分かれます。個別労働紛争解決システムの主柱を成すのは司法的紛争解決であり、一方、裁判外紛争処理は特に①~③に着目した制度です。

個別労働紛争解決システムの課題としては、労働紛争に関する情報の共有や連携が十分行われていないことが挙げられます。ある機関で紛争解決が不調に終わった場合も他の機関を紹介して紛争解決が未完のまま終了しないよう工夫する必要があります。

2.適切なあっせん

適切なあっせんの要素は、

 a) 当事者間の合意による自主的解決

 b) 労働法に基づき、事案の内容に即した適正な解決

に求められます。しかし、この2点は、例えば労働法及び事案の内容から見て適正な解決から乖離した解決内容に当事者が合意してしまうケースなど、しばしば相矛盾します。

また、当事者の主張・立証の厳密な吟味が難しいという限界もあります。法的な評価にも限界があります。

3.解雇の金銭解決制度

近年、被解雇労働者が職場復帰を断念して賃金相当額の損害賠償を求める訴訟が増加しており、不当解雇に直面した労働者の法的救済手段を多様化し、救済の実効性を高める意味で、労働者申立てによる事後型の金銭解決制度の導入を検討する時機が到来しているとも考えられます。

ただし、解雇の金銭解決制度に対しては、なお使用者による不当解雇を誘発するとの懸念が表明されています。仮にこの制度を導入する場合も、

①補償金の水準・法的性格

②補償金の決定方法

③解雇訴訟手続における位置づけ

等の難問が山積しており、多角的に検討する必要があります。

 

 

解雇の金銭解決制度の件、まだまだ多角的に検討する必要があるということですが、是非検討して、議論をし尽して、それで適切な制度を作ってもらいたいと思います。検討は多角的に、そして制度は様々な選択肢が自由に選べるように多様的に、というのが理想ですね。