『会報 2016年10月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
企業組織には様々な雇用状況の社員がいます。また、個人や家庭環境なども加えれば、更に多様な社員が混在することになります。このような多様性を尊重し、活かす人事戦略がダイバーシティマネジメントです。仕事と育児・介護の両立支援のための労務管理としてダイバーシティマネジメントを理解する記事が先月の会誌から連載されていますので、要旨をまとめてみました。
今回は、職場の女性を生かすことについてです。
1.女性管理職の増加
女性活躍推進法が施行され、管理職に占める女性の割合が各社低い水準であることが再認識されました。しかし、正社員として継続して働いている女性社員自体が少なく、企業も女性管理職に育てようという発想が乏しいため、女性管理職を増やすには経営陣が本気で女性社員を育てるという覚悟が必要です。
・これまで女性が就いていなかった業務にも女性を登用し、男女分け隔てなく公平に評価し、育てて行く
・女性の継続就労を阻害する長時間労働体質を改善する
・性別で役割を線引きしたり、長時間働く人ほど組織への貢献度が高いといった意識の企業風土を改善する
2.育児休業からの復帰
育児休業法と次世代育成支援対策推進法の後押しもあり、育児休業とその後の短時間勤務制度の利用が一般化して来ました。しかし、短時間勤務者が増えるに連れて問題も生じています。
・一部の人に負担が掛かることに対する管理職層の悩み
・本来の趣旨をはき違え、キャリアのためでなく家庭を必要以上に重視する目的で短時間勤務を選択する人の増加
・なかなか通常勤務に戻ることができないことによる、女性のキャリア成長の機会損失
3.育児中女性社員のマネジメント
①育児休業中と復帰時
会社や上司が、職場・業界の変化や休業者が従事していた業務の状況を知らせることが大切です。
・休業者の不安が解消される
・職場から必要とされていると感じることで、育児休業からの復帰後もしっかり働こうという動機づけになる
また、仕事と育児の両立が円滑にできるように、復帰前に1回、復帰し数カ月後に1回は面談を行います。面談で聞く項目としては、
・事実:子供の預け先、送り迎えの時間や会社を出る時間、緊急時対応等
・困っていること、配慮してほしいこと
などを盛り込みます。
②短時間勤務時
短時間勤務であるという理由で戦力外とみなし、補助業務など本人の能力に見合っていない仕事を与えることは良くありません。限られた時間内で生産性高く働こうと意識して工夫している人にとっては、短時間勤務というバイアスによって低く評価されてしまい、やる気を失わせてしまいます。
この記事を読んで、これは子育て社員ばかりでなく、65歳まで雇用延長となった高年齢労働者についても同様の課題があると考えました。労働力が減少して行く中、一人でも多くの人が働き続けて行くにはどうすればよいか、困難な課題は、性別に関係なくそして年齢に関係なく発生し続けますね。