『月刊社労士 20169月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

社労士会が運営する個別労働紛争解決センターは、労働関係紛争を公正・中立に、そして簡易・迅速に解決することを目的に設立され、現在ではほとんどの都道府県に設置されています。しかし最近の状況を見ると、あっせん件数増加の鈍化傾向が見られます。

このようなあっせん申立てと特定社労士のあっせん業務に関する一考察が会誌に載せられていましたので、その内容を要約してご紹介します。

 

1.あっせん申立の現状

各都道府県の社労士解決センターのあっせん申立件数の集計は、全体件数としては鈍化傾向が見られます。また、全国ベースのあっせん、労働審判、民事訴訟の推移を見ると、社労士解決センターだけが増加鈍化しているとう訳ではなく、あっせんを取り扱う機関全てがおしなべて増加鈍化という状況となっています。

紛争目的価額の上限引き上げ(60万円 → 120万円)や、あっせん事案に相応しいパワハラなどの相談・紛争件数が増えていることから、あっせん件数は増加すると見通していましたが、現状はそうはなっていません。ただし、広い意味で、助言・指導といったものを含めた場合、個別労働紛争は相変わらず非常に多い水準を示しています。

 

2.件数の増加鈍化傾向の要因

最近のあっせん申立件数の鈍化傾向の要因について、寄稿された社労士の方は、ADRに関わる法趣旨の理解や周知が紛争当事者間に徐々に進んで、トラブルに対して顧問やコンシェルジュ的な事前のアドバイスを求めるといった、企業側に自浄作用のケースが増えて来ていることも要因の一つだと述べられています。企業側のあっせんを含めたADRの知識装備を前提にして、具体的トラブルの対応についてセカンドオピニオンを求められるケースが増えているそうです。

こういったことから、多様化する個別労働紛争解決手法の中で、あっせんの役割は、その意義・必要性からして十分に地歩固めを果たしていると言えます。

 

3.個別労働紛争解決センターの施策

千葉県の解決センターでは次のような独自の工夫を実施しているそうです。

 ・あっせん業務の認知度向上・周知を図るため、隔月のサイクルで会員全員にあっせんに関わる記事についてメールを発信している。

 ・あっせん申立てに入口部分のサービス強化を図るため、毎月2名をあっせん相談員という役割として選任し、事案があればスピーディーに対応するようにしている。

 

4.労働問題への積極的な関わり

特定社労士の多くの方はあっせん業務を経験していない状況下、今以上に企業の人事労務面の顧問もしくはコンシェルジュ的な立場で企業と積極的に関わり合うことが求められます。人事労務コンサルティング手法に問題解決がありますが、“問題”とは

 ①結果として発生してしまった問題(トラブル)

 ②隠れた問題(未然トラブル、将来発生のトラブル)

 ③創る問題(目標、改善・改革)

3種類があります。あっせんは、①の問題の企業外の解決手段に当たります。これは一応の解決には至りますが、完全修復とはなかなか行きません。②の問題は“元通りまたは改善の解決”、③の問題は“改革の解決”と言い、特定社労士は企業の中に入り込んで、②や③の問題解決にも活躍すべきである、と寄稿された特定社労士の方は結ばれています。

 

 

人事労務コンサルティング手法の問題解決というものがあることを、今回の記事で知りました。仕事の性格上、プロジェクト運営に関わる問題解決とかリスク管理とかには馴染みがあるのですが、今度、この人事労務コンサルティング手法についても調べてみようかと思います。

 

 

 

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