『月刊社労士 20169月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

「ニッポン一億総活躍プラン」では、長時間労働の是正が政府の方針の一つとなっています。長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や女性のキャリア形成を阻む要因、男性の家庭参画を阻む原因となっています。

労基法については、労使で合意すれば上限無く時間外労働が認められている、いわゆる36協定における時間外労働規制の在り方について再検討を開始する、というのが政府の考えです。今回、この長時間労働の問題とその是正について論じた記事が会誌に載せられていましたので、その内容を要約してご紹介します。

 

1.わが国の現状

2014年の雇用者の平均年間総実労働時間を見ると、日本の労働者は年間で、ドイツの労働者より439時間、フランスの労働者より354時間も多く働いています。更に問題となるのは、日本は長時間働いている労働者の数が多いことです。週60時間以上労働する男性労働者の比率で見ると、日本は18%と、欧米諸国と比較して突出して高くなっています。

60時間労働は、時間外労働が週20時間、月間では80時間を超えることを意味します。これは過労死の認定基準に達しています。過重な業務に就労したことにより発症した脳心臓疾患は、業務上疾病として扱われますが、1カ月当たり80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症との関連性は強いと評価されています。

 

2.ヨーロッパの労働時間法制

労働時間が短いフランスは、法定労働時間は35時間であり、労働時間の上限は110時間、週48時間となっています。また、1998年から、EU指令の国内法化により、1日当たりの休息期間として24時間につき連続11時間以上の休息を与えなければならないこととされています。

 

3.今後の動向

日本では、もともと使用者が労働者を労働させうる時間(法定労働時間)は、休憩時間を除き140時間、18時間が上限とされており、36協定を締結した場合に、その範囲で初めて適法になります。労働組合がきちんとした36協定を締結していれば、異常な長時間労働は規制することができますが、労働組合が無いか、あっても力がないという場合もあるため、労基法は厚労大臣に、1日を超える一定の期間について、延長することができる時間の基準を定める権限を与えています。

しかし、この基準は但書で、特別条項付きの労使協定を認めているために、これを締結している事業場は40%強にも達し、延長時間が極めて長時間となっており、この是正は急務となっています。

労基法は、労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない、としています。このことを今一度想起しなければならい、と寄稿された大学院教授の方は結ばれています。

 

 

「ニッポン一億総活躍プラン」で謳われたこともあり、最近は特に労働時間の管理が厳しく、少しでも労働時間を短縮させようとしていることがはっきりと感じられます。わたしが社会に出た頃に比べると現時点でも相当に時間短縮されているのですが、欧米諸国と比べると、それでもまだ足りないのですね。できれば、労働時間ばかりでなく通勤時間のほうも、在宅勤務とかサテライトオフィス、テレワークなどを進めることで短縮を実現してほしいものです。

 

 

 

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