『月刊社労士 2016年9月号』(発行:社会保険労務士会連合会)より
労働力人口が減少して来ているわが国では、労働力の活用と向上が求められています。健康度の高い労働者による生産性の高い職場づくりを目的とした経営の一部としての活動にも視野の拡大が求められている訳です。このような状況を踏まえて今回、会報誌でこれからのメンタルヘルスのあり方を考察する記事の特集が始まりました。またいつもの如く、要旨をまとめながら学んで行こうと思います。
今回は、ワーク・エンゲイジメントを高める方法についてです。
1.2つの資源
従業員個人ができる工夫では、個人資源である“内的資源”を強化することでワーク・エンゲイジメントを高めることを狙いとしています。一方、組織ができる工夫としては、従業員の“外的資源”、つまり職場内の組織資源を増やすことで、一人ひとりの、更には組織全体のワーク・エンゲイジメントを高めることを目指しています。
2.従業員個人ができる工夫
この工夫には、仕事への自信を高める方法とキャリアへの道筋をつける方法があります。
(1)仕事への自信を高める方法
ここで重視されるのは、現在体験しているストレスや、将来体験するであろうストレスに如何に対処するかという点にあります。注目すべきは、仕事への自信 = 自己効力感 を高めることです。仕事への自己効力感を高めることがワーク・エンゲイジメントの向上に繋がります。
自己効力感を高めるには、仕事を上手に進めるためのスキルにも注目することが必要です。
・時間を上手にコントロールするためのタイムマネジメントスキル
・人間関係を円滑にするためのコミュニケーションスキル
・直面した問題を解決するための問題解決スキル
(2)キャリアの道筋をつける方法
バブル経済崩壊後、新卒者の採用を控える期間が続きました。多くの企業では中間層の社員が少なく、若手社員と高年齢の社員が多いという年齢層の二極分化が見られるようになりました。これは、若手社員のロールモデルとなるような先輩を見つけにくくなるという問題を引き起こしています。
仕事にエンゲイジするには、ある程度長期的な目標を立てることが大事です。この会社で将来こんな仕事をやってみたい、あの先輩のような仕事をやってみたい、といった少し先を見据えた亜目標設定が前向きな行動の原動力となり、ワーク・エンゲイジメントの向上に繋がると考えられます。
自己効力感を高めるには、仕事を上手に進めるためのスキルを身につけて達成感や満足感を持ちながら仕事する、そして長期的な計画を持って、将来に不安のない人生設計の中で仕事をする・・・つまりは、理想的な、当たり前と言えば当たり前の健全な働き方をする、ということですね。