『会報 20169月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

企業組織には様々な雇用状況の社員がいます。また、個人や家庭環境なども加えれば、更に多様な社員が混在することになります。このような多様性を尊重し、活かす人事戦略がダイバーシティマネジメントです。仕事と育児・介護の両立支援のための労務管理としてダイバーシティマネジメントを理解する記事が会誌に特集されていましたので、要旨をまとめてみました。

 

1.女性活用の課題

少子高齢化社会を背景に、社会保障を維持して行くための重要課題として“女性活用”が挙げられています。しかし現状は、職場で子育てをしながら働くことは困難であると考えて辞めてしまう女性も多くいます。“女性活用”を促進するには、妊娠・出産を経ても継続して働き続けられる社会にして行かなければなりません。また、持てる能力を最大限に発揮して会社に貢献する人財をなるように育成して行くという視点を持つことも必要です。

日本は女性の能力が活かされていない国として、先進国の中でも最下位に位置しており、日本の女性労働力率が他のG7並みになれば、GDP4%上昇する、と考える人もいます。

2.ダイバーシティの視点

今年4月から、女性活躍推進法が施行されました。この法令では、最低でも4つの項目

 ・採用における男女割合

 ・男女の平均勤務年数の差異

 ・各月の労働時間

 ・管理職に占める女性の割合

を数値で分析し、行動計画を作ることを義務付けています。この対象は、実は女性に限定されず、働く人全てにとって働き易くかつ成長する、というダイバーシティの視点を持たなければなりません。

平成17年には次世代法が施行された年でした。その年の各企業の初回行動計画は、女性社員の子育て支援を推進するという視点で、制度導入する企業が多数ありました。しかし2回目の行動計画になると、子育てしていない男女社員を含めた全社的なワークライフバランスの内容に変わりました。子育て中の女性だけを優遇する施策では、職場内で不協和音が生じたからです。

3.人事戦略の考慮点

女性活躍推進についても同様のことが当てはまるのではないかと考えられます。多様な社員が存在する組織内で、互いに違いを認め合い、尊重し、助け合いながら企業パフォーマンスを上げるために必要な施策は何か、を考えることが大前提となります。また、従来の価値観や判断基準に捉われた経営層と管理職層の意識を変えなければ、次代を担う優秀な人財を採用・育成・定着することはできません。

人事戦略には、新たに導入する制度や現状の制度が利用し易くなる環境作りに目を向けることが重要となります。社員の意識調査、他社事例の情報、ダイバーシティ推進施策、管理職啓発研修、キャリアデザイン研修などを包括的に企画・実行して行くことが求められています。

 

 

最近、ダイバーシティという言葉を聞く回数が多くなりました。女性推進だけでもその施策は十分でなく、これから更に充実・拡大して行く必要があるので、目の前には課題満載というところです。しかし、諦めて考停止してしまうと何にもならないので、少しずつでも解決して行こうという気持ちだけは失くさないようにしなければなりませんね。

 

 

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