先週、厚労省が公開している「多様な正社員」の円滑な導入・運用のための事例集を取り上げ、多様な正社員を活用した場合のメリットや雇用管理上の留意事項、活用のためのポイントについてまとめました。この事例集では、さらに多様な正社員の採用から退職に至る雇用管理をめぐる様々な課題への対応を検討し、労使等関係者が参照することができるようにするため、多様な正社員を導入している企業の事例を公表しています。これから5回にわたってその事例の要旨を紹介したいと思います。
原本を参照されたい方は、厚労省の以下のURLに公開されています。
4回目は、学術研究、専門・技術サービス業の建設コンサルタント業、地質調査業等の事業についてです。
職種ごとに労働条件を整理した上で、職種と勤務地が限定された専門職員(無期)を導入し、人材の定着率向上に寄与した事例です。
1.正社員
・基幹職
「技術系」と「事務系」に分かれています。
・地域専門職
勤務地限定(転居を伴う事業所異動はない)です。基幹職とほぼ同一の仕事内容ですが、建設コンサルティング業務や専門性を伴う事務、研究・技術、営業等に従事します。
・地域一般職
勤務地限定(転居を伴う事業所異動はない)です。基本的に基幹職の補助的な仕事を担当しますが、事務系の補助業務の他、技術系補助業務(CADによる図面データ整理等)や営業の補助業務に従事します。
2.非正規雇用の労働者
・契約社員
現場管理の一部を担当します。原則としてフルタイム勤務で、契約期間は1年以内、上限勤続年数なしとなります。
・パート
一般事務や図面加工等の技術系業務の補助を担当します。パートタイム勤務(週30時間以下)、契約期間は1年以内、上限勤続年数なしとなります。
3.多様な正社員の区分
(1)多様な正社員区分の導入
嘱託社員の労働条件の改善を目指して地域専門職、地域一般職を導入しました。
(2)雇用管理
地域専門職、地域一般職とも、フルタイム勤務、転居を伴う事業所異動はありません。
②就業規則
①労働条件
地域専門職は地域専門職専用の、地域一般職は地域一般職専用の就業規則を設けており、勤務地については「所定地域内において住居の変更を必要としない範囲で、異動を命じることができる」と明示しています。
③給与
基幹職とは異なる賃金テーブルを用いています。給与は基本給に加えて、職能給、地域給、役職手当によって構成されています。
4.雇用区分の転換
(1)正社員区分からの転換
本人から地域専門職への転換の申し出があると、本人の事情等を勘案した上で事業所長が経営層に対して上申し、その後人事部が転換の可否を決定します。
(2)多様な正社員区分からの転換
地域一般職の社員は、L2以上の等級に昇格すると、地域専門職への転換を希望することができます。地域専門職の社員は、原則としてL4に昇格することで基幹職への転換資格を得ることができます。
(3)非正規雇用の労働者区分からの転換
①正社員登用
非正社員の職務評価の結果、社員本人の適性や事業所のニーズ等を踏まえ、直属の上司が本社へ推薦し、人事部が正社員への登用の可否を決定します。
②無期転換への対応
法改正を契機に制度の見直しを進めているところであり、地域専門職や地域一般職への登用も含めて検討している段階です。
次回は、製造業の浄化槽を中心とした各種排水処理装置の設計・施工・維持管理等の事業についてまとめます。