『月刊社労士 20168月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

女性の活躍を促進するという観点から、企業における配偶者手当の在りかたが注目されて来ています。厚労省でも「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」が開催されており、先日も政府が配偶者手当の見直しを検討している旨のニュースがありました。今回、企業の配偶者手当をどう考えるかの記事が会誌に載せられていましたので、その内容を要約、情報追加してご紹介します。

 

1.女性の活躍

配偶者手当とは、企業において配偶者がいる従業員に対して支給される手当で、「家族手当」や「扶養手当」といった名称が用いられることもあります。これが女性の活躍に対する阻害要因となるのは、配偶者手当が支払われるための条件として、配偶者の収入が一定額を超えないことが求められているからです。配偶者手当をもらえる範囲に自分の年収を抑えようとして就業時間を調整する行為(就業調整)が行われる可能性が生まれるのです。

パートタイム労働者の総合実態調査では、配偶者がいてパートタイム労働をしている女性で、就業調整をしている割合は21%ありました。配偶者手当の存在は就業調整の一因となっているのは確かです。

2.配偶者手当の歴史

配偶者手当が作られ、浸透して行った理由としては、これまでのわが国において仕事に専念する夫と家事や育児に専念する妻といった、性別に基づく役割分担が普及したこと、正規雇用労働者に関して勤務地や残業の程度などを雇用契約で明確に定めることをしない無限定的な働き方が広まったことなどが挙げられます。

会社側の裁量の余地が大きい無限定的な働かせ方をさせる場合には、その配偶者の“内助の功”に対しても一定の対価を支払うという捉え方は、合理的な仕組みとも言えます。

3.働き方に与える影響

 ①パートタイム労働者本人にとっての問題

就業調整が行われると、それがなかった場合と比べて労働時間が短くなるため、一定の技能形成に、より長い時間がかかることになります。企業側は重要な仕事を与えなくなる可能性があり、労働者の稼得能力向上にマイナスの影響を与えることになります。

 ②他の労働者への波及効果

計画的な労働時間の調整が行われていなければ、忙しい年末の時期に労働時間を抑制するといった帳尻合わせが行われることも考えられ、その結果としてパートタイム労働者の役割が重要な職場において人手不足が発生してしまいます。

 ③就業調整しない他のパートタイム労働者への負の影響

就業調整を行なうような労働者は賃金引上げに対する意欲が低くなるため、パートタイム労働者の時給が上がりにくくなる効果が存在します。労働市場において低賃金でも働こうとする労働者がいるということは、それ以外の賃上げを望む労働者に対して悪影響をもたらすことになります。

4.求められる具体的な取り組み

考え方の基本は、配偶者の働きかた中立的な仕組みであること、多様化する労働者のニーズに対応したものにすることです。これまでの事例を見ると3つに大別して考えられます。

 ・配偶者手当を廃止し、それに相当する部分を基本給等へ組み入れたり、他の家族手当を増額したり、新手当を創設したりする。

 ・配偶者手当を縮小し、他の手当等へ変更する。

 ・検討の結果として、配偶者手当を存続する。

 

 

厚労省からも「『配偶者手当』の在り方の検討に向けて ~配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項~ (実務資料編)」といった資料等が作成・公開されたとのことですので、そちらも今度調べてみようと思います。

 

 

 

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