『会報 20164月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

「健康経営」については、昨年の10月~12月にわたって会誌の連載記事を紹介しました。以前の社会や企業では、従業員の健康管理よりも利益が優先されることが多く、健康管理は自己責任とされる傾向がありました。しかし、今後は企業の利益と従業員の健康を両立させて行くことが求められます。従業員の健康増進に対する費用も福利厚生的な捉え方ではなく、重要な投資と考えることが大切です。今回、この健康経営の取り組みについて会誌でも特集されていましたので、その要旨をまとめてみました。

今回は、健康維持増進が行われない理由についてです。

 

4.積極的に健康維持増進が行われない理由

(1)限られた経営資源

安衛法等を遵守することが精一杯で、必要最小限の対応になっています。

(2)法律上は努力義務

50人未満の企業は「産業医や衛生管理者の選任」「衛生委員会の設置」「ストレスチェックの実施」等、法律上の義務になっていません。

(3)意識の浸透不足

従業員の健康が経営上の課題であるという意識があまり浸透していません。

(4)ノウハウ不足

地域産業保健センター、協会けんぽ、市区町村の健康増進課等、身近に無料で情報提供してもらえる仕組みが用意されているのに、これらが十分に活用されていません。

(5)多額な費用がかかるという誤解

健康経営には多額な費用がかかると誤解されていることです。従業員同士でコミュニケーションの機会を設けたり、ホワイトボードで体調を自己申告したりすれば、コストゼロから始めることも可能です。

 

5.取り組みのポイント

(1)中小企業が健康経営に取り組む7つのステップ

 ①健康経営の重要性に対する経営者の深い理解。

 ②経営者自ら強いメッセージを社内に発信する。

 ③法令で義務付けられた従業員の健康管理を徹底する。

 ④従業員との積極的なコミュニケーションや協会けんぽ等との連携により、自社の従業員の健康状態を把握する。

 ⑤自社における職場環境やコミュニケーション環境の問題点を洗い出す。

 ⑥洗い出された自社の問題点を解決に導くプラスアルファの取り組みを考案・実施する。

 ⑦実施した取り組みの効果を検証し、フィードバックする。

この7つのステップを着実に繰り返して行くことが従業員の実感に繋がり、企業風土の改善を促すことになります。

(2)健康経営のための3者の役割

健康経営では

 ・経営者

 ・管理職

 ・従業員

のそれぞれの役割が重要となります。

 

 

次回は、健康経営の事例についてまとめます。

 

 





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