『会報 20163月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

日本では労働組合の数も活動も減少しており、かつてのような組織的・大規模な組合運動は見られなくなりましたが、また最近、労働組合法に関係する場面が生じるようになって来ているようです。それは、近年の契約社員、派遣社員、パート労働者などの不安定な雇用環境が大きく影響していると考えられます。今回、労働組合法の基礎知識を解説した記事が会誌で特集されていましたので、その要旨をまとめてみました。

今回は、団体交渉についてです。

 

1.団体交渉の意義

団体交渉は、労働組合が労働条件の維持・改善等を目的に労働協約の締結を目指し、使用者と対等な立場で交渉を行なうものであり、労働組合が行なう様々な活動の中でも重要な意義を有しています。

わが国では企業の枠を超えて労働者を組織する「合同労組」が相当数存在しています。ある労働者が合同労組に加入した場合、その労働者個人の紛争を解決するために、団体交渉という手段を利用するということも行われています。

2.団体交渉の主体

団体交渉の主体に関しては、団体交渉の「当事者」と「担当者」という概念を区別して理解しておく必要があります。

(1)団体交渉の当事者

団体交渉の当事者となるのは、労働組合と使用者です。労働組合に関しては、上部団体・単位組合・支部といった階層構造になっていることが多いことから、どの範囲で団体交渉の当事者となるかが問題となります。団体交渉の当事者となる労働組合は、必ずしも単位組合だけとは限りません。

また、同一事項について、上部団体と単位組合から別個に交渉を申し込まれた場合は、二重交渉の恐れが生じるため、使用者は両組合間で団体交渉権が調整・統一するまで一時的に団体交渉を拒否することができます。

(2)団体交渉の担当者

労働組合側は「労働組合の代表者」または「労働組合の委任を受けた者」が団体交渉の担当者となります。

使用者側においては、個人企業の場合の当該個人や法人代表者が団体交渉の担当者となることができます。その他、人事部長や工場長などが担当者となり得るか否かは、当該企業内において、これらの者に団体交渉権が配分されているか否かによります。

 

 

次回も引き続き団体交渉についてまとめます。

 

 

 

ペタしてね 読者登録してね