『会報 20161月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

日本の社会保障が抱えるテーマとして“社会保障の持続可能性”が言われますが、これには3つの側面があります。①財政面における持続可能性 ②人口面における持続可能性 ③人々の意識面における持続可能性 です。高齢者数の増大と、経済を支える生産年齢人口の減少が高齢化を進展させ、これを原因に経済成長の停滞と国家財政の逼迫が引き起こされ、不安定な社会環境が、前提としての基盤である人々の連帯や支え合いを揺す振らしつつあります。今回、この3つの側面を踏まえた高齢化社会における社会保障を考察し、課題提起する記事が会誌に載っていましたので、その要旨をまとめてみました。

 

1.社会保障制度改革

(1)社会保障・税一体改革

日本の社会保障制度の展開過程を、財源問題や少子高齢社会への対応という側面から辿って行くと、次のようにまとめられます。

1973年の第1次オイルショックで、拡大基調にあった日本の社会保障制度に転機が訪れました。そして1980年代には、国家財政の窮迫、人工高齢化などを背景とした制度改正が行われるようになります。

1990年代後半には、社会保障構造改革が重要政策課題となり、国民に痛みを伴う改正が行われるようになりました。

2010年から「社会保障・税一体改革」の名の下、消費税増税と一体的に社会保障制度改革が企図されました。子ども・子育て支援法など少子化に配慮した制度改革もなされました。その後、社会保障・税一体改革で積み残しとなった医療・介護分野の改革に焦点が当てられることになります。

そして、今後も医療・介護分野を中心に給付の適正化、負担の引き上げを伴う制度改革を行わざるを得ない状況にあります。

(2)社会保障の改革論議

幾度もの改正を経た社会保障制度は複雑さを増すことになりましたが、システムが複雑化する中で重要なのは、制度を個別的に捉える対応ではなく、制度全体を視野に収め、そのあり方を幅広く論じる場の存在です。

2001年の省庁再編前は、総理大臣の下に置かれた社会保障制度審議会がその役割を果たしていました。社会保障国民会議中間報告・最終報告、社会保障制度改革国民会議報告書など、政府内に設置された会議帯により、社会保障制度のあり方が総論的・各論的に論じられて来ました。

これらの報告書は、社会保障に造詣の深い研究者等が多くを占める場での審議を通じてまとめられたもので、社会保障制度改正の理念や考え方、方向性を示すものでした。

次回は、経済財政改革と社会保障の関係についてまとめます。



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