『月刊社労士 2011年3月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

傷病手当金

 

『月刊社労士』に毎号載せられている「社会保険審査会裁決事例」の内容を要約、情報追加してご紹介します。

 

<事例趣旨>

請求人A男は膵腫瘍の療養のため労務に服することができなかったとして、平成15年5月4日から7月31日までの期間、傷病手当金を受給しました(初回受給期間)。

その後、職場に復帰しましたが、平成16年7月1日から膵腫瘍及び膵癌による労務不能を事由として傷病手当金の受給を再開しました(後続受給期間)。

傷病手当金の支給期間は1年6カ月までと定められているので、傷病手当金の支給は平成16年11月3日までで打ち切られました。請求継承人B子は、途中で職場復帰の期間があるので、平成15年5月4日支給開始分の継続とみなさないでほしいとし、1年6カ月を超える平成16年11月4日から同月30日までの期間の傷病手当金を請求しました。本件の場合、初回受給期間と後続受給期間との間に治癒の状態があり、別々の傷病手当金の対象とみなされるかどうか、がポイントとなります。

 

<裁決結果>

請求継承人に対し、原処分は適法かつ妥当であるとし、請求した傷病手当金の支給は認められませんでした。

 

<事実の認定及び判断>

請求人は膵癌の病名で、初回受給期間と後続受給期間の間、毎月複数回通院して、継続して治療を受けていました。

傷病手当金支給に係わる運用において、同一傷病の再発と認められる場合であっても、次の要件を満たす場合は、いわゆる社会的治癒の考え方によって、再発後の期間について新たな支給期間とする取り扱いをしています。

① 前後の支給期間の間に、対象傷病による格別の症状を認めず、医師の治療も要しない状態が相当期間あったこと。

② 前記無症状の期間、通常の就労状態で勤務を継続していたこと。

 

本件の場合、初回受給期間と後続受給期間の間に職場復帰した状態が存在します。しかしその期間は11カ月に止まり、その間、請求人は毎月複数回通院して治療を受けていましたので、社会的治癒の状態にあったと認めることは困難と判断されました。

 

請求人は膵癌により、平成17年3月15日に死亡しました。そのため、請求継承人により再審査請求が行われたわけですが、法律に従って厳正に裁決された結果とはいえ、少し残念な気持ちです。

 

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