『会報 2011年3月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

特集 - 年金相談の現場での課題と職域拡大

 

昨年10月、11月に東京都社会保険労務士会が行った労働・社会保険関係無料相談会では、全相談件数614件のうち、厚生年金保険が268件、国民年金が144件を占め、労働に関する相談件数をはるかに凌ぐという結果になったそうです。この現状を踏まえて、会報の3月号では4人の開業会員の方が、年金相談の現場や年金相談における報酬の問題、年金相談と職域拡大との係わりなどについて座談会を行った様子が特集されています。

私が社労士を目指したのも年金の問題がきっかけでしたので、この特集を読んで感じたところなどまとめてみました。

 

1.多様化する相談内容

年金はその相談者の働いてきた履歴や生活してきた人生の内容に密接に関わる事柄ですので、相談内容も多岐に渡ります。座談会に出席されている開業会員の方は、それぞれご活躍されている現場や立場、専門分野に応じて、これまでの経験から次のような相談内容の例を挙げられています。

 

●企業からの相談は年金を含めた年収の試算

民間の金融機関での年金相談は、行政機関で行われている相談とは若干異なるそうです。出席された方の一人は、年金事務所では、基金の代行部分の受給額がどのくらいになるのか、年金請求先がどこになるのかまでは教示されていないように見受けられる、と指摘されています。

 

●老齢厚生年金受給権者で長期加入者や障害者特例に該当する方の定年後の働き方や、退職後の医療保険、雇用保険と年金との調整、労災から障害または遺族給付を受けている場合の年金との調整、所得税や住民税等々

長期加入者や障害者特例については一般の方にはなじみが薄いはずなので、注意すべきポイントですね。ただ、雇用・労災保険との調整や、さらに税金などとの係わりまでいくと、特別に調べておかないと即答は難しいそうです。

60代前半の方の、雇用延長または退職後の働き方から見た在職老齢年金の相談

まだまだ働きたいと思っても、働くともらえる年金が減ってしまう、という在職老齢年金ですので、相談者の納得のいく働き方を、相談の中でお互いに見つけていくようにしなければならないですね。

 

●離婚分割

平成19年、20年からスタートして、ある程度の件数がコンスタントにあるそうです。ちょうど私が受験する時期に改正されたので、追加でややこしい離婚分割を勉強しなくてはならず、頭を抱えたことを覚えています。でも年金相談の場では、困ったで済まされず、少なくとも基本的な内容は回答できるように準備しておかなくてはならないですね。

 

●海外に長期赴任する場合や海外へ移住する場合で、国民年金に任意加入する時、しない時の損得、セカンドライフプランで各種保険や税などとの係わり

私などは考えることもできない環境ですが、定年後に物価が安くて住み易い海外に移住する、という人も増えています。移住してしまうと年金事務所への相談も簡単にはできないですし、年金事務所の海外派出所(?)はあるのでしょうか? 海外在住の日本人の方が裁定請求のためだけに一時帰国されることもあるそうです。このような場合は特に的確なアドバイスが必要とのことです。

 

受験勉強で随分と社会保険の知識を身につけたと思っていたのですが、年金相談の場では、それを超える複雑な相談があるのですね。まだまだ実践力不足であることが分かりました。

 

次回は、障害年金への相談の現状についてまとめます。

 

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