『月刊社労士 2011年1月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より
 
老齢厚生年金 

『月刊社労士』に毎号載せられている「社会保険審査会裁決事例」の内容を要約、情報追加してご紹介します。

 

<事例趣旨>

請求人は2回の会社勤務により合計85月の被保険者期間を有していました。そのため老齢厚生年金の請求を行いましたが、社保庁は既に脱退手当金を支給済みであるとして、老齢厚生年金は支給しない旨の処分をしました。

請求人は、脱退手当金は受給していないとして、社保庁の老齢厚生年金を支給しないとした処分の取り消しを請求しました。本件の場合、脱退手当金が支給されたかどうかをどのように判断するか、がポイントとなります。

 

<裁決結果>

請求人に対し、老齢厚生年金を支給しないとした原処分は取り消されました。つまり、既に脱退手当金を支給したという社保庁の主張は認められず、改めて請求人に被保険者期間に相応する老齢厚生年金が支給されることとなりました。

 

<事実の認定及び判断>

請求人の甲A子は会社勤務で合計85月の被保険者期間を有し、資格喪失日の直後に婚姻による姓の変更(乙 → 甲)を届け出ていました。一方、支給原簿ではその半年後「○○ ○○」を受給者として脱退手当金を支給した旨の記録がなされていました。

脱退手当金支給の有無をめぐる対立では、支給したとする保険者の側で領収証等の書類を提示して問題を解決するのが筋道となっているそうです。しかし、保険者は書類の保存期間を経過したものは所定の公簿に必要事項を記録した上で廃棄しています。では公簿の記録内容はどうかというと、本人請求・代理人請求の別、支給形態(現金か口座振込か)、口座振込の指定金融機関名など、重要な情報は全く収録されていません。

公簿の記録上、脱退手当金は「オツエイコ」に支給されたとされていました。請求人は資格喪失直後に氏名(姓)変更の届出をしており、さらにその後半年以上経過した後に脱退手当金を請求(これは手当金の支給日から推定される)していますが、これを旧姓で請求することは常識的には考えられません。従って、原簿の記録をもって、請求人が脱退手当金を受給したと認定することは困難であると判断されました。

 

脱退手当金の制度はあまり一般的ではないので、支給されるはずの年金をもらい忘れていることが多いのではないでしょうか。この事例のように、特に女性の方で結婚して会社を辞め、姓が変わっているケースは再度確認しておいたほうがいいですね。

 


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