『会報 2011年1月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

障害年金 重複障害における併合等の問題点 (1)

 

東京都社会保険労務士会の会報 2011年1月号に障害年金の特集がありました。これまでにも会報では4回、障害年金の特集が組まれていますが、今回は、ポリオ後症候群に関する併合等認定の問題点がまとめられていますので、以下に要旨を紹介したいと思います。

ちなみに、過去の特集についても次の過去記事にまとめていますので参考にしてください。

 ・精神障害の障害認定基準

 

 ・障害年金の実践街頭相談

 

 ・障害年金の受給手続き

  

1.ポリオ後症候群

先ず、ポリオという病気ですが、これはポリオウィルスによる感染症で、抵抗力が弱い乳幼児の罹患率が高くなっています。発病当初は風邪に似た症状が3日間ほど続き、熱が下がる頃に突然足や腕が動かなくなり、その麻痺が後遺症として残ります。

幼少時ポリオに罹患し、その後に機能が回復して通常の社会生活を送っていたところ、10~40年後に新たな障害が発生することがあり、その総称をポリオ後症候群と言います。ポリオ感染時には神経細胞が侵されて手足の筋肉が動かなくなります。残った神経が筋肉細胞を動かしますが、長い年月とともにその神経が衰えて機能しなくなることがあり、これがポリオ後症候群の原因とされています。根本的な治療法はなく、対処療法が行われています。

 

2.障害年金における取り扱い

これまで障害年金におけるポリオ後症候群の認定は、「ポリオに起因する疾病」として、ポリオで診療を受けた日を持ってポリオ後症候群の初診日とされていました。しかし、平成18年2月17日の通達により、障害年金の認定上「別疾病」としてとらえ、初診日についてはポリオ後症候群として初めて診療を受けた日とする取り扱いに変更されました。

この通達以前は、厚生年金被保険者中にポリオ後症候群を発症し裁定請求を行っても、ポリオと同一疾病であるという理由で却下されてきました。罹患した当時は幼少期であるため、厚生年金保険の被保険者であるはずはなく、また国民年金とは違って20歳前障害の規定もないからです。

この通達の持つ意味は大きく、ポリオで障害基礎年金の決定を受けた人にも影響があります。20歳前障害の場合は、1、2級の障害状態であっても、前年の所得が一定の額以上であると、半額または全額が支給停止となります。それが、ポリオ後症候群として別疾病と扱われることになると、改めて障害厚生年金を受給できる可能性が開かれることになります。

 

次回は、併合等認定基準とその問題点について、要旨を紹介します。

 

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