最近読んだ小説  - 立松和平 「光の雨」 -

 

梅雨もそろそろ明けそうですね。梅雨だから、というわけではないですが今回読んだのは立松和平さんの「光の雨」です。前回は松本侑子さんの作品「巨食症の明けない夜明け」を紹介しましたが、松本さんはテレビ朝日のニュースステーションのキャスターで、立松和平さんもこの番組にしばしば出られていたので、強いて言うと“ニュースステーション”つながりというところでしょうか。

 

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題名に“雨”の文字が入ってはいますが、内容は1972年2月に起きた「あさま山荘銃撃戦」とその後に明らかになった山岳拠点での「粛清=同士殺人」事件を下地にした小説です。私はこの小説に出てくる青年たちの言う、いわゆる「政治の季節」を直接経験したわけではないので、この小説に書かれている内容がどこまで事実に基づいて書かれているかは想像することしかできません。ただ、梅雨の時期に読んだとはいえ、一貫して自分の心にまとわりつく得体の知れない何かを感じ、それを最後まで理解することはできませんでした。

「闘争」「総括」「戦士」「弾圧」「武装化」「殲滅戦」「敗北死」...どのページにも「革命」に付随する言葉が繰り返し繰り返し出てきます。このような事実が40年前の日本に本当に起きたのだったか、それさえも油断すると疑ってしまいそうになる、今の時代からするとそんな信じ難い事件です。

梅雨の時期は雨が続き、じめじめしてお世辞でもこの季節が好きだという人は滅多にいないでしょう。でも梅雨がなければ秋に稲の穂を実らせることができません。果たしてこの小説の題名にある「光の雨」は、彼らが求め続けた「革命」を成就する「豊穣の雨」だったのでしょうか。

同じ「光の雨」という題名で映画も作られました。DVD化もされていますが、内容は小説とは別物と考えた方がよいかもしれません。

 

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