精神障害の障害認定基準

 

『会報 2010年1月号』(発行:東京都社会保険労務士会)の投稿で、障害年金の受給手続きについて紹介されていました。また、『月刊社会保険労務士 2010年1月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)では、強迫神経症として障害給付を裁定した社会保険審査会裁決事例が紹介されていました。

骨折とか失明とかの身体の障害は判り易いですが、精神の障害の場合はどのように等級が決められているのか興味を持ったので調べてみました。

 

国民年金・厚生年金保険障害認定基準

国民年金法及び厚生年金保険法による障害の程度を認定する基準としては「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」が定められています。以下に、精神障害に関する箇所を抜粋して説明します。全文は「国民年金・厚生年金保険障害認定基準(昭和61年03月31日庁保発第15号)」で検索してみてください。

 

(1)認定基準

 

国年令別表

 1級 : 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

 2級 : 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

 

厚年令別表第1

 3級 : 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの / 精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

 

厚年令別表第2

 障害手当金 : 精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

細かな言葉の違いがあるだけで、具体的なところは分かりませんね。それに「前各号と同程度以上と認められる程度のもの」というのは、一緒に定義されている眼の障害や肢体の障害と同程度ということで、これもあまり参考にはならないと思います(別途、全文をご覧下さい)。

具体的には、その後に説明されている次のような文章が判断の基準となります。

精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、

1級

日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

障害手当金

労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

これも言葉の遊びみたいな感じですが、少しはましですかね。

 

(2)認定要領

 

認定要領として、精神の障害は、「精神分裂病、分裂病型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」(以下「そううつ病」という。)、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害(精神遅滞)」に区分する、とされています。パニック障害や不安障害は、そのままでは対象とならず、例えばそううつ病の症状を伴う場合のみ障害年金の対象となるそうです。

各等級に相当する障害の状態として一部例示が次のように説明されています(これはそううつ病の例です)。

1級

高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の介護が必要なもの

2級

気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

 

 

さらに判断のためのキーワードが増えた感はありますが...結局のところ、精神障害の等級の判断は難しい、ということのようです。障害年金の請求は、社労士、それも障害給付を専門にしていて経験を重ねた社労士の方に相談するのが安全ですし、正しく申請するためにも大切ですね。