パイロットである私がスカイスポーツを始めようとおもい、グライダーの体験搭乗に行ったのが前回の話。


今回はハンググライダーとパラグライダーに挑戦してみる。


実を言えば最初から始めるスカイスポーツとしてはパラグライダーが本命ではあった。

とりあえず何も言わずにこの動画を見てほしい

https://youtu.be/Oos4ojutOMM


この動画のように気ままに、空を飛べたらどれだけ楽しいだろうか。

まさしく人間が翼を得るとはこういうことなんだろうなと感じる。

そこには飛行機で飛ぶのとは全く違った自由さがあるように思えた。


しかしながら選択肢は全て経験しておきたいということでパラグライダーとハンググライダーの両方を体験できる場所を見つけた。


予約日に集合場所の駅に着くと、茶髪のドレッドヘアの若い男性が待っていた。体験をお願いしているスクールの人らしい。

率直な印象としては「俺の知ってる航空業界人とは(文字通り)毛色が違うな」というものだった。


後に知るが、彼はれっきとしたハンググライダーのインストラクターであり、その見た目に反してわかりやすい論理的な指導を行う方であった。


スクールに向かう車内でパラグライダーかハンググライダーを始めることを検討してると話すと、ドレッドヘア氏はかく語った。曰く、パラとハングの競技人口は過去には拮抗していたが、最近はパラ人口が圧倒的に多い。

ハング人口は減少の一途であり、全国でもハングを習えるスクールは数カ所だけになっている。

その背景にはパラグライダーの技術進歩により飛行性能とコンパクト化がすすみ、人気を博している。

しかしながら依然としてハンググライダーは飛行性能でパラを凌駕しており、ハングにしかない魅力を有していることなどである。


講習斜面に着くと、ハンググライダーから体験させてもらえることになった。

早速機体を組み上げてゆく。金属のフレームと布をテントの設営のような要領で組み、15分程度で組み上がった。

思っていたより大きい。その構造やスケール感は運動会で使う白いテントのようだなと感じた。


ハンググライダーの操縦原理はグライダーにぶら下がった人間が動く事で重心位置を変え、ピッチ(機首)の上げ下げやバンクをコントロールするとの説明を受ける。

具体的にはバーを前に押しやれば体が後方に移動し、ピッチは上がる。

普通の航空機は操縦桿を押し込めばピッチは下がるので、逆の操作である。


早速ハーネスをセットしてグライダーを担ぎ走ってみる。

思いの外重い機体のバランスをとりながら走るのが難しい。

しかしうまくバランスをとって走り始めると、翼が揚力をえてグライダーがどんどん軽くなる感覚を感じた。

2、3回繰り返したところでグライダーの重さが完全に無くなり、逆に自分が引っ張られる感覚を覚える。

気がつくと高度数mを浮遊していた。


通常の飛行機の離陸の際も、加速するにつれて翼が揚力を得て飛び上がろうとする力を感じる瞬間は操縦してて気持ちの良い瞬間のベスト3には入るとおもうが、ハンググライダーはよりダイレクトにその感覚を味わえてすこぶる気持ちが良い。

そして想像以上にピッチの操作が繊細で、レスポンスよく反応してくれる感覚にも好感を覚えた。


次にパラグライダーである

パラグライダーの操縦は主にブレークコードと呼ばれる2本の紐を引くことによって実施する。

これは翼後端を折り曲げることにより飛行機でいうフラップのような役割をさせて減速したり、片方だけ引くことによりエルロン操作のようにして旋回する機構である。

逆にいうとピッチ操作を直接行う機構はほぼないというのが衝撃的ではあった。



やはりパラグライダーもハンググライダー同様自分が走ることによって揚力を得て浮き上がる感覚が気持ち良い。

しかし先にも述べた通りピッチの操作はハンググライダーほどダイレクトなものではなく、飛行機を操縦する感覚とはこの点に大きな差を感じた。


2つの体験を終え、どちらも楽しさの片鱗を味わえた。

操縦感覚の相性で言えばハンググライダーのほうが良いなと感じた。

しかしやはり業界として衰退しているハンググライダーとその一方で盛り上がりを続けているパラグライダーでは、パラグライダーの方が今後の発展性が大きいと考え、パラグライダーのスクールに入校することを決めた。


いずれにしろ趣味として空を飛ぶことを始めることにウキウキとしつつ、「仕事にしろ趣味にしろ、ますます地に足がついてない人生になるな」とひとりごち、スクール入校の書類にサインしたのであった。