こんばんは!
経営戦略と戦略会計で会社を変える、FSAコンサルティング株式会社社長の谷川俊太郎です。
今日は水曜日ですね!【他社戦略】更新していきます!
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【記事要約(平成29年11月3日 日経MJ P1 より】
100円ショップ大手のセリアが客の性別、年代を集めることをやめた。売れ筋だけで棚を埋めて売り上げを伸ばしたいセリアにとって、特定の客にしか刺さらない商品は死に筋ともいえる。今の消費者の好みに年齢は関係ない。そんな消費者に受けるヒット商品をつくるには、顔の見えないデータではなく、SNS(交流サイト)や街中の消費者の生の姿をみていくことが重要という。
既存店売上高が17年4~9月期も毎月プラスと好調ななか、客層分析を捨てた理由について、セリアの河合映治社長は「雑音を取り除くためだ」と話す。誰が何を買ったのかというデータがなぜ雑音なのか。「重要なのは全体の売れ行きであって、(売り上げはさえなかったが)特定の客層には深く刺さったという言い訳になるようなデータが存在すると、優先順位を間違う」と強調する。
小売り各社が客層データを収集・分析する狙いは、ターゲットとする年代の購買が多い商品の事例をもとに次のヒット商品の開発につなげたり、来客頻度の高い常連の好む商品を店舗ごとに品ぞろえしたりすること。その客層分析を切り捨てたセリアは、商品開発については生身の消費者の動きに視線を注ぐ。
セリアと一緒に商品開発を手掛ける雑貨メーカーもスタンスは一緒だ。文具メーカーのサンノート(大阪府富田林市)の野口智史経営企画部長は「商品開発で重視するのは、なぜ売れていいて、その背後にどんな欲求があったのかを突き詰めること」と話す。
(記事要約終わり)
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性別、年代の分析をやめるのですか!思い切ったことをやりますね。データが集められるのならば、集めた方が良いのでは?と考えてしまいますが、それを「雑音」と言い切るのは、すごいと思います。自社が大事にする経営指標をしっかり考えているということなのでしょう。
性別、年代の傾向を知ることは、ターゲットを決めての商品開発に利用しやすいでしょう。しかしながら、セリアさんは100円均一のお店です。基本的にはターゲットを絞るのではなく、「安く、便利に、良いものを」というニーズに絞って広くお客様を集めて売上、利益とも伸ばせるのでしょう。だとすると、性別、年代にとらわれない、全体売り上げが良い商品はなぜ売れているのか、どんな欲求を満たしているのか分析する「欲求(ニーズ)」を考えるやり方が合っていると判断したのですね。素晴らしい割り切りだと思います!
では、今回注目した点は以下のことです。
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【記事で特に注目した点】
顧客を「欲求(ニーズ)」からとらえようとしている点
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<注目した背景>
今回これに注目した理由の理論は佐藤義典先生の、「戦略BASiCS」からです。以下、「戦略BASiCS」を簡単に説明します。
*例によって、理論が分かりにくかったら、 佐藤義典先生の理論のせいでなく、私の説明の力量不足です。その場合は、佐藤義典先生の著書を是非読んで下さい。
戦略BASiCSの解説
この「戦略BASiCS」は、佐藤義典先生の中核的な理論です。ですが、この理論、見た目は簡単でも、非常に奥が深いです。ですので、ここで書くのは、あくまでもさわりのところだけです。詳しく知りたい方は是非佐藤義典先生の本を読んでみて下さい。
「戦略BASiCS」とは、経営戦略・マーケティング理論は世の中に数多ありますが、まとめると5つのパターンに分類され、それを再構築した経営戦略理論です。そして、その5つを一貫性と具体性を持って考えることで強い経営戦略ができるという実践理論です。その5つは以下の通りです。
Battlefield (戦場・競合)
Asset (独自資源)
Strength (強み)
i
Customer (顧客)
Sellingmessage (メッセージ)
頭文字をとって「BASiCS(ベーシックス)」です。それぞれを簡単に説明すると、
B :自社が戦っている戦場・戦っている相手(競合)を明確にし
A :競合が真似できない強みをささえる資源を構築し
S :資源を強み(自社から買ってもらえる理由)にし、
C :自社の強みを選んでくれるお客様に対し
Sm :メッセージを伝えて選んでもらおう
とこのような考え方で構築される理論です。「お客様(C)が、競合(B)でなく、自社を選んでもらう理由を強み(S)とし、それを独自資源(A)で支え、それを伝えよう(Sm)」という言ってみれば当たり前のことです。ですが、これを自社で考えると難しいです。この理論、すべてにおいて「一貫性」を持つことが重要です。例えば、とても高品質なワンピースを作れる縫製技術(A)があるが、それを「ウチの強み(S)は『安さ』です!」といって売り出していたらどうです?『安さ』といっても、高品質なものです。ユニクロと比べて安いのでしょうか?しまむらと比べては?こう考えると、この会社は、「独自資源(A)」と「強み(S)」の一貫性がとれていないですよね。
一貫性を5つ全てにおいてとるというのは、非常に難しいです。この一貫性ですが、以下の「3つの差別化軸」で考えると一貫性を取りやすくなります。
※3つの差別化軸
佐藤先生の理論では、上記強み(S)のパターンは大別して3つしかないそうです。
①商品軸:(競合より)高品質・新技術
②密着軸:(競合より)個別ニーズに対応
③手軽軸:(競合より)早い、安い、便利
強みはこの3つのパターンしかありませんので、これを考えることで一貫性をとっていくことができます。
例えば、先ほどの縫製技術の話でしたら、他社よりも「破れにくい」という強み(S)を生み出せる技術力(A)があるなら、安くするのではなく、高くても「破れにくい服を欲しがるお客様」(C)を探す。といった感じです(具体性はないですが…)。これは①商品軸の例ですね。このように、自社が戦える(戦いたい)軸は何かを考え、それに合わせて一貫性を取った戦略を作っていけることで、BASiCSの一貫性がとれるようになります。
非常に難しいですが、できれば、とても強い経営戦略となります。そうしたら自信を持って、経営戦略を遂行していくだけです!是非この「戦略BASiCS」考えてみたいですね!!
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では、戦略BASiCSでみていきましょう!今回は顧客(C)です。セリアさんは今回廃止されるようですが、性別、年代で分けて分析しようというのは多くの会社で実施されていますし、多くの会社では「20代女性をターゲットする」といった、顧客ターゲットを考える際にも利用しているのではないでしょうか?
しかし、よく考えてみると「20代女性のニーズ」って分かりますか?例えば飲食業だとして。「オシャレなものを食べたい?」「量を少なくした方が良い?」「健康に気を使ったメニューにして野菜多め?」色々考えるでしょうが、「20代女性」っていっても様々な人がいます。大学生だったり、結婚して子供のいる主婦だったり、バリバリのキャリアウーマンだったり。
「オシャレ」なとこばかりに行きたいでしょうか?子供のいる主婦の人でしたら、子供が騒ぎそうでそのようなお店は敬遠してしまうかもしれません。量が少ない方がいいのでしょうか?私の知り合いでお店がサービス量を少なくしてランチを提供したら不満そうな顔をしていた方がいました。同じ「20代女性」といっても、ニーズは様々です。もっと言えば、同じ人でも状況によってニーズは変わります。普段は友達と長時間おしゃべりしたいと思っている人でも、急いでいるときの昼食などは早く提供してくれるお店の方が嬉しいでしょう。
極論を言ってしまうと、性別や年齢といった情報は必要ありません。大事なことは「ニーズ」これを把握することができれば、性別や年齢といった情報は全く必要がなくなります。「オシャレなものを食べたい」というニーズは、若い女性ももっているでしょうが、インスタ映えを考えている男性だって持っています。「早く食べる」というニーズは男性サラリーマンを想起しますが、急いでいるOLの方だって持っているでしょう。結局大事なことは「ニーズ」。今回の記事の言い方を使わせてもらうと、どんな欲求を満たしている商品なのか?ということが大事なのです。
セリアさんはこの「ニーズ」の把握には性別、年齢といった情報は雑音と思っているのですね。たしかに、「部屋をオシャレにしたい」とか、「部屋を整理する道具を安くほしい」といったニーズは老若男女変わらないでしょう。その商品がどんな欲求(ニーズ)を満たしていて、なぜ沢山売れるのか、そこを考えることが重要ということなんでしょうね。100均だとやはり量が売れてなんぼです。一部のお客様に熱烈に支持されていたとしても、量が売れなければ意味がない。そういった意味では、「60代男性の方はよくこの商品を買われるんです」という情報があったら、じゃあ、置いておくか。と考えてしまうかもしれません。それは全体売り上げを重視するという会社の方針とブレがでることになります。それを防ぐためにもあえて性別、年齢の情報を外したのですね。思い切った判断だと思います。
ただ、性別、年齢で分ける方法は意味がないとは言いません。セリアさんのように、100円均一で多品種のものを扱っているようなお店ですと、実際に商品を並べてみて、お客様の購買の状況を見ながら、売れ筋商品は何か、なぜ売れているのか、どんな欲求を満たしているのか?といったことを検証していけます。しかしながら、例えば社運を賭けた新製品開発というような場合ですと、闇雲に作って売ってみるというわけにはいきません。ちゃんとした仮説検証をする必要があるでしょう。その仮説検証に大事なことが「顧客ターゲット」を明確にすること。そのために、「30代男性の生活パターン」などを考えることは非常に重要だと思います。そのような場では性別、年齢のデータというのは重要でしょう。要はターゲットを絞り込んでニーズの仮説を立てる時には性別、年齢で一度分けてみるのも良いということですね。
ですが、実際の店舗で生のニーズが把握できるような状態だったら、あえて性別、年齢といった情報にこだわる必要はないのだろうと思います。大事なことはお客様の「欲求(ニーズ)」。これが良く分かっているからこそ今回の判断ができたのですね!
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【会計的な効果】
会計的な効果ですが、まず売れ筋商品を切らさないということは「売り逃し防止」の効果があると考えられます。すなわち、これまでほしいと思って買いにきたが、商品がなく、結局買わなかったということを防げます。売れ筋商品を把握して、棚のスペースを確保する、在庫を確保することは売上高の増加につながるものと考えます。
もう一つ、キャッシュ的な面でも効果はあるでしょう。売れ筋商品を多く棚に並べるということは、あまり売れないものの在庫を減らすことでもあります。あまり売れないものを「一部にファンがいるから」という理由で残しておくと、ずっと売れず、在庫が滞留する可能性もあります。在庫は在庫である限りはお金を生みません。売れて初めてお金になるんですね。あまり売れない商品を置かない、在庫を持たないということは、キャッシュフローの改善という効果も生み出します。
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【自分ならどうするか?】
性別、年代といった情報をカットするというのは思い切った判断だと思います。そもそも情報がなかったら見たくても見れないわけですから。情報はとっていても見ないようにすれば良いのではないかと思いますが、データがあったら見たくなるのでしょうね。人は。
性別、年代といった情報をとらず、「欲求(ニーズ)」を把握しようという取り組みを進めていったなら、私だったら、一番売れ筋のニーズ専用の棚を設けるなどしてみたいと思います。例えば「部屋の整理をしたい」というニーズが強いと把握できたなら、文具や掃除道具、収納用品関係なく、使える道具をまとめた棚を作ってみるのもやってみる価値があるのではないかと思います。
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いかがでしたでしょうか?性別、年代といった情報は重要そうに思えますが、それをなくしてしまってもセリアさんは大丈夫という判断をしました。大事なことは「欲求(ニーズ)」だと分かっているからなのでしょう。みなさんも「欲求(ニーズ)」を把握する方法、考えてみましょうね!
【おためし版MGのご案内(主催:FSAコンサルティング株式会社)】
FSAコンサルティングが「お試し版」戦略ゲーム研修(通称:MG)を開催します!「MGってよく聞くけど、どんなのだろう?」「興味はあるけど、いきなり長時間は難しいな・・・」という方向けにおためしでMGを体験してもらう機会を用意しました!
おためしとはいえ、ちゃんとゲームもやりますし、講義も一部ですがしますよ!この機会に是非、体験してみませんか?
このMGは通常、2日かけて実施していく研修で、最低でも丸1日(3期)は体験して高い効果が得られると考えていますが、やったことがない研修に丸1日も時間を確保することが難しい方に是非おためしで体験してもらいたいと思います。MGとはどのようなものか、どんな経験ができるのか?この「おためし」で経験してみませんか?
<開催日時・場所・講師>
第一回:平成29年11月22日(水) 13:30~17:30
※会場の都合上、13:00からしか準備ができません。
早めに来られても会場の準備ができていないことがあります。ご了承ください。
場所:AOSSA 605会議室(福井市手寄1-4-1)
第二回:平成29年12月13日(水) 13:30~17:30
場所:カフェあんのん(福井市北四ツ居2-7-17)
講師(いずれも):谷川俊太郎(西研究所MG公認インストラクター)
<参加費>
お1人様:5,000円
<申し込み方法>
下記メールアドレスまでご連絡下さい。
メールアドレス:fukui-strategy@fsa-c.com
<カリキュラム>
13:30~13:45 MGについての説明
13:45~15:00 第1期(練習期)&ルール説明
15:10~17:00 第2期&決算
17:00~17:30 戦略会計入門 講義
※研修の性質上、終わりの時間が前後することがあります。ご了承ください。
<Facebookイベントページ>
第一回:https://www.facebook.com/events/481926432168070/
第二回:https://www.facebook.com/events/523452048013269/