キーボーディストのライル・メイズを最初にライブで観たのは1985年、35年前のことだ。アメリカに移住する前の年。高校を卒業したばかりだった。
 
 
パット・メセニーが東京に来る、しかも小さなジャズ系のライブハウスに。すぐにチケットをとって、最前列のまさに目と鼻の先で見た。メセニーのものすごい超絶なギタープレイに圧倒された。その時にピアノで参加していたのがライル・メイズだった。アコースティック・ジャズだったので、彼はシンセサイザーは使わずに生ピアノだけ弾いていた。
 
テクニックで圧倒するメセニーに対して、ライルのそれは、決してテクニックをひけらかすようなこともなく、淡々とメロディーを拾うことに徹しているような、どちらかと言えば地味にも思えるピアノプレイだった。
 
翌1986年にアメリカに渡って最初の夏休み、バークリー音大の寮で同じ部屋になったジェフが、ニューヨーク州バッファロー市の実家に招待してくれた。ボストンからバッファローまで8時間のグレイハウンド・バスの旅だった。バスの中でずっと聞いていたのがパット・メセニー・グループのTRAVELSだった。
 
 
アメリカの広大な大地。時々遠くに山が姿を見せるけれども、ひたすら平野と丘が広がり、空が大きい。丘の向こうに夕日が沈む景色と音楽がマッチして、自分のアメリカの原体験が形作られた。BBキングを聴いてブルースに目覚める数ヶ月前のこと。
 
今でもこのアルバムは大好きだ。キーボードを担当しているのがライル・メイズ。絶妙なサウンドメイキング。彼がいたからこそのパット・メセニー・グループだった。
 
そのライル・メイズが一昨日66歳で他界した。
 
Travelsをヘヴィローテーションで聴く日が続きそうだ。