今月発売になる"Rising Shun Plus"のオリジナル"Rising Shun"のレコーディングを行ったのは、11年前の2007年1月。

image

 

当時書いたブログを引っ張り出してきたので、興味のある人はレコーディングの様子を追体験してみてくださいね!!

 

 

1/7/2007

昨日は、カントリー・クラブ・ヒルズにあるココ・テイラー邸へリハに行く。ゴルフ・コースのような名前だけど、サウス郊外の高級住宅地だ。今回のアルバム制作の話をして、1曲で参加してもらえないか聞くと、
「私でよければ喜んで参加させてもらうわ。シュンは私のギタリストなんだし、いつでも協力するわよ」
とココは言ってくれた。私でよければなんて、ココが参加してくれたら百万人力だよ。


心が広く人間がデカい女王なのだ。
それから彼女が所属するアリゲーター・レコードのイグロア社長に相談すると、すぐにOKを出してくれたので、ココの参加が正式に決まったんだね。
30年も前に録音した曲(タイトルは発売までのお楽しみ、ということにしておこう)なのに、かなり歌詞を覚えていたのはさすがだ。2、3回も繰り返すと節回しや曲の感覚をずいぶん思い出した様だね。キーは1音半落としてちょうどいい感じ。約1時間、ギターと歌だけでリハる。あとは前日にバンドと合わせれば大丈夫だろう。
 

この冬はココにとってもずいぶん長いようだよ。
10月から2月までずっとオフだもんな。ココは歌う事しか趣味のない人で、40年以上歌う事を楽しみに生きて来た。
だからオフが長いと精神的に辛いらしい。小生もギターしか趣味がないからよくわかるんだよね。
皮肉な事に、大物になってギャラが高くなりすぎてブルース・クラブでは彼女を雇えなくなってしまった。
だから夏場の大きなフェスティヴァルや海外ツアー、大きなカジノが主な活動場所になっているんだね。

それだけに、このレコーディングで思い切りうたってもらいたいと切望する小生なのだ。

 

 

1/9/2007

ココのリハーサルに続いて今日はバンドでのリハ。
ドラムにマーク・マック、ベースに弟のチャールズ・マック。この二人は昨年のジェイムス・コットンの来日ライブで見た人も多いと思うし、マークはリットー・ミュージックからドラムの教則ビデオも出している。

 

(photos Shinsuke Kado)


さらにキーボードにはココのバンドのスタン・バンクス。


そして数曲で小生のDVD『R&Bギターの常套句』でベースを弾いているアンドレ・ハワードが参加。


歌には、昨年出た『リスペクト・ザ・ストーンズ』(ジェネオン・エンタテインメント)の“MissYou"で歌っているジェラルド・マクレンドンと小生のビッグ・ブラザー、JWウィリアムズがそれぞれ数曲で参加してくれることになった。

このメンバーで7曲音合わせを。

シカゴには”You can take the man out of the Southside, but you can't take the southside out of the man"
と言う諺があるんだ。直訳すると
”男をサウスサイドから連れ出す事は出来るが、サウスサイドをその男から抜き出す事はできない”
つまり、シカゴのサウスサイドで育った黒人男は、他の街に行ってもサウスサイドで育まれた習慣やクセが抜けないものだ、ということ。
せっかく日本に行くのだから、寿司や日本料理を体験すればいいものを、フライド・チキンばかりを食べたがる。極端に言えばそういうことだね。

これはモロに音楽についても言えることで、ニューオーリンズ風のファンク曲を書いて、ニューオーリンズの人々に捧げようと思っても、シカゴのミュージシャンがやるとパワーで押すシカゴ・ファンクになってしまう。
白人の超有名バンドが書いたブルース曲をカバーしようとすると、オリジナルのフィーリングがよくつかめず、結局シカゴ・ブルースになってしまう。
悪く言えば不器用、良く言えば個性の強い連中の集まりということでもあるんだね。
そうやって結局はシカゴの音になるってわけだ。
それでいいのだ。バカボンは偉い。
今夜は昼にアドレナリンを出しまくったせいかよく眠れないので、ワインを1本空ける。このバカ日記を書いたら寝ましゅ。
おやすみ。

 

 

1/16/2007

スタジオに入る前の最後のリハをやる。シカゴは前夜から雪が降り始め、小生が事故った12/1以来の大雪になりそうな気配だ。”嵐を呼ぶ男”の本領発揮だよね。しかもベースのチャールズはジェイムス・コットンとのロードで前の晩にボストンを車で出発したばかりで、夜中に3回も電話で起こされてその都度「今、ペンシルヴァニアに入った」、「オハイオを通過中」、「インディアナだ」と報告して来る。

冬のロードは道のコンディションも悪くて心配だったけど、朝の8時に無事シカゴに到着。やれやれお陰で寝不足だぞ。

 

11時からリハに入る。先週、歌入りの曲はほぼリハっていたので、今日はインストものを中心にサっと切り上げるつもりだったけど、それでも終わったのは2時を過ぎていた。万全の仕上がりか?と問われれば、う~んと言わざるを得ないね。細かいレベルではもっとタイトにいきたいところもあったりするけど、経験でミュージシャンの連中は本番にならないと力を発揮しないというのもわかっている。さらに個人的には、あまり音を決めすぎずにアバウトさを残しておいた方が、フレッシュに曲に向かえる、つまりその瞬間だけの音を引き出す事ができると思っている。あとは神様お願いします、の心境だね(笑い)。少しずつレコーディングの様子をアップするのでCHECK IT OUTよろしくです。

 

 

1/19/2007

火曜から始まった新作のレコーディングは、昨日のホーンセクションの音入れでシカゴ編が終了。



火曜のトップはJWウィリアムスだ。

 

某カバー曲を2曲歌ってくれる。いつもながらジェイ(JWのニックネーム)のパワフルな声には圧倒されっぱなし。朝からテンションが高いのなんの(笑い)。


その後小生のオリジナル曲でシカゴのハーモニカ・エース、ビリー・ブランチが思い切りブロウしてくれた。

 

さらにインスト曲を3曲録音。初日に6曲を録り終える順調な出だしだったと言えるね。

水曜にはココ・テイラーが昼前にスタジオに登場。

 

ココ本人のオリジナル曲とは言え、もう30年も前に録音したものだ。何度も聞き返して歌詞も全部書き取って準備をしてくれた。さすがプロ中のプロのココなのだ。テイクを重ねる度に声にパワーが出て来たね。録音後も他の曲をココが歌い始めて小生がすぐにギターでバックをつけるとそのままジャムになってしまった。


ココが帰った後は、シンガーのジェラルド・マクレンドンがスタジオへ。

 

小生のオリジナルを3曲歌う。ジェラルドの声はサム・クックに似ていてソウルっぽい曲には良く合う。ジェラルドは生真面目な男で、少しでも気に入らないところがあると自己批評が始まる。おいおい充分かっこいいぞ、と何度かなだめる。こうして2日目は4曲を録音。

木曜は、ジョー・ブラウンをリーダにしたJam Hornsがオリジナル2曲でホーン・ラインを録音。

 

最近はキーボードでホーンラインを作っているアルバムも多いけど、やっぱり本物のホーンセクションはイントネーションや厚みが違うよね。朝から夜までずっとレコーディングに付き合ってくれたバンド・メンバーのマーク・マック、チャールズ・マック、アンドレ・ハワード、スタン・バンクスはみんなタイトでご機嫌なプレーを繰り広げてくれたね。

ということで、シカゴでのレコーディング第一ステージは無事終了だ。このレコーディングの為にシカゴに来てくれた本アルバムのエグゼクティヴ・プロデューサー廉慎介君がシカゴの音源を持って日本へ発った。

 


そして第二ステージは2月に宇都宮で。Yotsuba Recordsのスタジオにてギターのオーバーダブ、編集、ミックスダウンなどレコーディングの最終作業が待っている。2週間ほどかけてタップリ音を作ろうと思っているんだ。レコーディングのさらなる詳細は、慎介君がブログにアップした時にリンクしたいと思う。
Check it outよろしく!!!