チャック・ベリーが亡くなった。享年90。

ロックの創始者は誰か?

何人かの名前が挙がるかもしれないけれど、チャック・ベリーはまさにロックの立役者の1人だった。

彼がいなければ、ロックという音楽そのものがずいぶん違ったものになってたのではないかと思う。

チェス・レコードを描いた映画「キャデラック・レコード」で、マディ・ウォーターズにチャックを紹介されたチェスのオーナー、レナード・チェスは、チャックの音楽を聴いて、

「カントリーのようでもあるけど、俺にはよくわからない。マディ、君はどう思うんだい?」

こう聞かれたマディは、

「まあ彼にチャンスを与えてみてはどうですか」

と答えるシーンが描かれている。

いつの時代でも革新的な音楽は、本当に理解されるまでに時間がかかるものだ。

こうして「ジョニーBグッド」、「ロール・オーバー・ベートーベン」などの名曲がチェスから発売され、チャックの音楽が世界を駆け巡っていく。





チャックを描いた「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」も大好きなドキュメンタリー映画 だ。エリック・クラプトン、キース・リチャーズ、リンダ・ロンシュタッドなどロックのスーパースターたちがチャックを囲み、彼と音楽を作っていく過程が描かれている。

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その映画の中で、ブルース・スプリングスティーンがチャックのバックバンドをやった時のことを回想しているシーンがある。ブルースは言う。

「チャックはいつまでたっても来ないんだ。俺達は何の曲をやるかも聞かされていなかった。彼はもう来ないのではないだろうかと不安でいっぱいだった。ステージの5分前になってやっとチャックがステージに現れたんだ。ギターをケースから取り出すと、

「ヘイ、みんな元気かい?さあ、金のためにプレーしようぜ」

チャックはこう言ってステージが始まったんだ」

ブルースは笑いながらこのエピソードを語っている。

ミュージック・ビジネスで、辛酸をなめ尽くしたこの世代の黒人ならではの言葉だ。


小生は、シカゴのフェスティバルや、ロサンゼルス郊外のロングビーチ・ブルース・フェスティバルでチャックと同じステージに立つ機会があった。チャック本人と話すことは叶わなかったけれども、彼の生のステージを見ることができたのはいい思い出だ。

存在も音楽も全てがワン・アンド・オンリーのオリジネーター。

彼の音楽はこれからも愛され、聞かれ、語られ、演奏され続けるだろう。

ありがとうミスター・ロックンロール、チャック・ベリー。合掌