シカゴに帰ってから、連日のステージが続いている。
時差ぼけ対策に、昼に少しだけ寝て、夕方から起きてレッド・ブルを飲んでスッキっとしてからギグに向かうのがこの数日の日課だ。

「4月だなあ。昨年までだったら、ココとツアーに出ている頃だなあ」なんて、今日は今は亡きココに思いを馳せていた。振り返ってみれば、ココの体調に不安があったけれど、本当にエキサイティングで、楽しい9年間だった。
「My Shun. What you've been up to?」
毎年ツアー初日に、オヘア空港で顔を合わせる時に、ココがこんな風に話しかけて来た光景が浮かんで来た。心の中で手を合わせる。「ココ、見守ってください」と。

$菊田俊介オフィシャルブログ「菊田俊介ブルース日記」Powered by Ameba-Mines4/7/10(Kingston Minesのステージ。左からコーデル、スタン、JW、小生のギターで飛び入りしたフロイド)

夜は、Blue Chicagoでのギグだった。1、2セット目は多くのお客さんが来て、ブルースやファンクやR&Bナンバーでいつもの様に盛り上げる。そして、潮が引いた様に一人二人と帰って行き、最後のセットに残ったのは10人くらい。
ここからが、ブルース・ショウの始まりだった。

まずはJWが"Murder on your hand"からオリジナルの"Don't ever leave me", スタンダードの"Blue Shadow", "The Thrill is gone", "Ain't no sunshine"などのスローなナンバーを連発して、ブルースモードに深く入って行く。
そしてゲストシンガーのパット・スコットが"Reconsider Baby", "Help me"などを歌い上げて行く。普段はお客が少ないとテレッと歌ったりするパットも、この時ばかりはスイッチが入ったようだった。
JWやパットが感じているブルースを一緒に感じながら弾いていた。淡々とシンプルで、それでいてグルービーかつディープなブルース世界がそこにあった。

「あ、ココが降りて来ているのかな」

その時フとそう思う。

「人生の全ての経験が、より良いプレーをするのに役立っている。悪く辛い経験も、ブルースをより深く理解することにつながるんだから、It's all good」

そんな声が自分の中で響いて来た。
自分が直面している問題や、通り抜けて来た出来事などは、ブルースの歌のどこかにちりばめられているものだ。それを実体験として感じながらプレーする事で、曲への理解がさらに深まる。
最後にパットが歌った”Turn your love light"で10人全員が踊って、セットは終わった。
なんとも満たされた気持ちに覆われていた。

ブルースをもっと感じる様になった気がする。
そんなフィーリングを引き出してくれ、シェアできるミュージシャン仲間がいることのありがたさ。
至福の思いを感じながら、楽器を片付けていた。


でも、みんなで打ち上げをするでもなく、ギャラをもらったら、それぞれが家に帰って行く。それが我々ブルースマン達の生活だ。
家に帰って、一人でワインを飲みながらプレーの余韻に浸る。これもまたブルースだ。