第31回目のKennedy Center Honorが7時すぎにいよいよ始まった。

”ニューヨークの金と、ワシントンのパワーと、ハリウッドのチャームが一つになった”

と形容されるこのイベントは、会場を訪れた参加者の顔ぶれだけで、その言葉が納得できてしまう。

ブッシュ大統領夫妻を筆頭に、コンドリーザ・ライス国務長官、コーリン・パウエル前国務長官などの政府首脳をはじめ、アレサ・フランクリン、クインシー・ジョーンズ、クリント・イーストウッド、デンゼル・ワシントンなど政治、音楽、映画界の大物がズラリと並んだ。

今年のHonor受賞者は、俳優のモーガン・フリーマン、シンガー/女優のバーバラ・ストレイサンド、The Whoのピート・タウンゼントとロジャー・ドルトリー、カントリー・シンガーのジョージ・ジョーンズそして、ダンサーのトゥワイラ・サープの6人。
ココが受賞したというのは勘違いで、このショウに出演する事になったのは、ブルースファンのモーガン・フリーマンたっての希望によるものだった。ちなみにココは、数年前にヘリテージ・アワードを政府から贈られている。


我々の出番は、すぐにやってきた。
ステージ・マネージャーの合図とともに幕が上がって、会場を埋め尽くした2500人の姿が一気に目の前に広がった

クリント・イーストウッドが、マイクを通してバンドメンバーを一人ずつ紹介する。
「世界中を駆け回って演奏活動を続けている、ブルースの将軍(Shogun of the blues)シュン・キク~タ
キクタのところで、キック~とちょっともたついてから、キク~タと言い直していた。銀幕史に残る大俳優にとっても、日本語の名前の発音は難しいか(笑い)。

菊田俊介ブルース日記-クリント・イーストウッド(クリント・イーストウッド氏はブルースも大好き。音楽の映画も何本か監督している)

最後にココが紹介されて、客に向かって手を振りながらステージ中央に歩いて出て来た。
真ん中に着いた瞬間に、Gマイナー・コードを弾いて、イントロに入る。まずは、ココと小生の掛け合いだ。
ギターのリフと共にバンドが入ってきて、ココが1番のヴァース(Aメロ)を歌い始めた。
そして2番のヴァースが歌い終わったところで、ココに少し近づいて「Solo,Koko」と耳打ちした。
ココは、歌をやめてソロのスペースをあけ、その瞬間、小生はハーモニカのウィリーに向かって頷く。
間髪を置かずにウィリーのソロが入った。

結局、曲とキーを変える事ができない以上、パイントップとハニーボーイのソロは見送らざるをえなかった
何百万人が見るこの日に限ってはリスクは負えない。二人のマネージャーにはあらかじめそれを伝えて了解をもらった。
小生がソロを弾いて、普段のライブの様にやってしまえば一番ココも安心できるのはわかっていた。でも、このシチュエーションで小生がソロを弾くわけにもいかなかった。

半世紀以上もブルースに捧げて来た大先輩達に花を持たせなければ

そう思って、マディ・ウォーターズのバンドで長年活躍したウィリー”ビッグ・アイ”スミスに、ハーモニカ・ソロをやってもらうよう、事前に打ち合わせておいた。(ちなみにウィリーはマディのバンドではドラマーだった)。
「ココがイラだってすぐに歌に戻らない様に、ソロの出だしはなるべく強く吹いて欲しい」
とウィリーにお願いしておいた通り、存在感のある強いソロを吹いてくれた。
数小節のソロの後に、ココがうまく歌に戻ることができた。よし、繋ぎはうまくいった

あとは、エンディングだ。
ココがAメロを2回歌った後で、「Let's go home, Koko(音楽用語では、”曲を終わらせよう”という意味でLet's go homeを使う)」と耳元でささやくつもりでいたけれど、ココはちゃんと2回歌った後で、エンディングの合図の『ワ~オ~』という叫びを入れてくれた。よし!
すぐにバンドに合図を送って、エンディングに流れ込んだ。

ステージそでに戻って、まずは一息。フ~
ステージ・マネージャーが「シュン、ありがとう。君のおかげで助かったよ」と言ってくれたので、時間内にしっかり収まったのだろう。

「シュン、よかったぞ。Good Jobだ。君がいなかったら2時間くらい曲が続いていただろうな」とイグロア社長がジョークを交えながら労ってくれた。パイントップとハニーボーイにソロを渡せなかったのは、心残りだったけれど、とにかくやれることはなんとかやったと思う。

肩の荷がス~っと降りるのを感じた

そうしているうちに、BBキングの演奏が始まった

続きはまた明日。グッド!