実家に桃の缶詰があった。
去年の7月31日にお見舞いに行った時に、私の持って行った桃の缶詰を、美味しそうに笑顔で食べていた彼の姿を思い出して、泣けてきた。
食堂の窓を背に座っていて逆光だったけど、あの笑顔を絶対に忘れないように、私は一生懸命に目に焼き付けようとした。
あの日は、朝からお腹が痛いと言っていたのに、私には笑顔しか見せなかった。
げっそりやつれて黒い顔になってたけど、浮腫もとれてきていて。
「暑い中来てくれてありがとうね」
お見舞いに行く度に、ありがとうと言ってくれた。
思いやりのある優しい人だったな。
あの頃は、腎瘻にしたことで、膀胱に放射線治療したことで持ち直して、退院しても会えると思っていた。
退院したら身体障害者手帳を使って、割引で映画を観にいこうとも言っていた。
行けると信じていた。
でも、結局この桃の缶詰の日以来、2回しか会えなかったのだ
しかも病院で、面会時間わずか15分。
彼は最期まで死にたくないと言い、たくさんの心残りを遺して逝ってしまったけど、残された私も心残りが多すぎる。
実家にある桃の缶詰を齧ってみた。
かなり硬い(苦笑)
あの時私が買って行った缶詰は、もっと柔らかかった。
でもシロップの味はあの時と同じ。
涙·····