昨日、東進ブックスさんより
『「なぜ」と「流れ」でおぼえる日本史年代暗記』
を出版させていただく運びとなりました。
私は30年間、年代暗記の本は一冊も出しませんでした。
「年代暗記の本は絶対に出さない」と決めて公言しているほどでした。
しかも最近では年号を答えさせる問題は減ってきています。
そのような状況なのに、なぜ年代暗記の本を出すことを決めたのか。
その理由はこの本が「年号暗記」ではなく「年代暗記」となっているところにあります。
「センター試験」が「共通テスト」に変わり、「日本史B」 が「日本史探究」に変わります。
これに伴い、「些末な歴史用語の暗記」をやめさせようという風潮が強くなっています。
「坂本龍馬が歴史の教科書から消えるかもしれない」
というニュースも記憶に新しいかと思います。
(もちろん私は坂本龍馬が瑣末な歴史用語とは思っておりませんので誤解なきよう)
それでは歴史用語の暗記を要求しないで、どうやって歴史のテストを成立させるのか。
それは歴史の本質的な理解です。
本質的な理解とは、意味の理解と時系列の把握です。
歴史を学ぶ順番としては
1)時代背景を理解する
2)その上で、それぞれの時期を把握する
3)さらにその上で、それぞれの意味を理解する
という手順になります。
例えば現在は武士の時代ではありません。
武士の時代ではないので、ちょんまげを生やしている人は、私の知り合いでは、サンミュージックのお侍ちゃんしかいません。
ただ、「お侍ちゃん」と書きたかっただけなので、例としてあまり良くはないかもしれませんが、
歴史を知る上でまず一番最初に把握することは時期なのです。
そして年号暗記の問題が一昔前によく出た理由は、
時期を把握しているかどうかを聞きたくて年号の暗記の問題を出していたと考えられます。
しかしそれが行き過ぎてしまいました。
「この年号覚えて一体どうするの?」といった年号が入試でよく出題されるようになりました。
これらに対する反省から新しい入試制度は生まれました。
年号の「数字」を覚えることは意味がありません。
しかし「年代把握」を行うことは歴史の根幹です。
時系列を無視した歴史学習は全く意味をなしません。
今回、センター試験から共通テストに変わり、日本史Bから日本史探究に変わることによって、時代背景の把握、時期把握と言ったことが大きく問われる時代になると考えます。
なぜなら瑣末な用語で得点差をつける事が出来ないわけですから、その代替策として、そういった部分で得点差をつけることになってくるだろうと考えられるわけです。
時期把握というのは些末な暗記ではありません。
歴史の根幹部分をなすものです。
ですから本書を世に問うこととしました。
本書では、スタートになる年号から出発して、
「だからこの1年前にこの出来事があった」
「だからこの一年後にこの出来事が起こったのだ」
といったことを紹介したものです。
また一見関係のない年号の繋がりにも言及しています。
例えば1368年
明が建国された年です。
実はこの年に足利義満は室町幕府第3代将軍に就任しているのです。
もちろんこれはただの偶然です。
しかしこの足利義満が、後に明の冊封体制に入ることとなるわけです。
また1392年
朝鮮王朝が建国された年です。
実はこの年に南北朝合一が実現しました。
朝鮮国内の動乱が一段落した年に、日本の国内での南北朝の争乱も一段落するわけです。
もちろんこれは偶然なのかもしれませんが、
新しく導入された歴史総合という科目は
日本史と世界史のリンクを問う科目です。
世界というのは驚くほどに同じ時期に同じように動いているものなのです。
世界はリンクしているのです。
そのリンクを学ぶために必要なものが
時期把握です。
年代把握です。
私のやることはいつも「かなり早い」みたいです。
『「なぜ」と「流れ」が分かる本』も、20年前に最初に出した時は、早すぎて誰もついていけなかったみたいです。
https://www.amazon.co.jp/dp/489085634X/
でもお陰様で今は主流となっております。
『一問一答』は1993年に出した時はさすがに早すぎました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4890855726/
今はやっと定着しております。
今年の夏に出版した
『共通テストはこれだけ日本史 B 演習編』(文英堂)
https://www.amazon.co.jp/dp/4578241270/
こちらに書いた解説や、こちらで取り上げた演習問題は
担当編集者から
「この工夫って受験生に伝わるんでしょうか?」
と言われました。
多分伝わらないと思います。
高校の先生でもなかなか伝わらないのではないかと思います。
でもそれでいいんです。
やったら成績が上がる考え方ですから、効果を出してくれた人たちが徐々に広めていってくれることでしょう。
それだけとんでもない工夫をしています。
しかし一方で、この「早さ」についていける編集者のおかげで、
書籍を世に問うことができております。
これには心より感謝していますし、実績を出せば長い目で見ると売れてくれるという学習参考書の世界に感謝いたしております。
本書を使ってぜひとも新しいテストに強くなってください。
令和四年十一月二十五日
金谷俊一郎