昨日は大雪の中、仕事帰りに三越劇場で新派公演。


最初は

「口上」

とは言っても、新派の新春の口上なので、最初に舞踊。

やはり、舞踊家だけあって、波乃久里子さんの踊りは秀逸。

月乃助さんの素踊りも身長があるため、

あの小さい三越劇場の舞台では圧倒的迫力。


10分の口上の後、30分も休憩を取って

「お嬢さん乾杯」

木下惠介監督の終戦直後の作品。

昔、観た記憶はあるが、大方の筋は忘れていた。

内容は、軽快かつ昭和20年代らしい素朴なラブコメディ。


舞台は、圭三の行きつけのバーと、

ヒロインの元華族池田邸で、

この2場面のみでうまくすべてを表現していた。


主役の圭三は月乃助さん。

元々、がさつなキャラはニンではないが、

それがかえって、

「がさつなんだけど、一本気で素直な好青年」

というキャラになり、この芝居にはピッタリ。

笑わせるところも、しっかり笑わせてくれるし、

なにせ華が違う。

新派に入団してもらえないかと個人的には思う。


今回は、新派の生え抜きの役者連が良かった。

瀬戸摩純さんの泰子は

華族令嬢にはみえないが、

間の取り方が良かった。


あと、井上恭太さんの五郎が良かった。

この人は、この2~3年でドンドン腕を上げている。

恭太さんが月乃助さんの良い相手役になれば、

新派ももっと面白くなると思った。


児玉真二さんの眞一も、

この人にしか出せない味で絶妙。

鈴木章夫さんのバーの客も

新派の役者の味が出て良い。

大野梨栄さんの雪枝もコミカルを真面目にやっていて良い。

松村沙瑛子さんの華子は、

華族役の役者の中でもっとも昭和20年代の華族令嬢らしく見えた。


もちろん、大物たちも負けてなく、

水谷八重子さんのバーのマダムは、

さすがジャズボーカリストだけあって、

ニンの芝居で、最後の場面もコミカルに盛り上げた。

波乃久里子さんの鶴代は、

一瞬の顔の動きで、娘の現在の気持ちや状況をすべて悟らせる芝居が素晴らしい。

娘の泰子の芝居をずいぶんと助けた感。

安井昌二さんの浩三は、もういるだけで元華族の大旦那という感じで秀逸。


個人的には、「東京物語」や「麦秋」よりも、

むしろ新派らしい芝居だと思った。


楽しく観れる芝居です。

まだお切符はございますので是非とも。