徳島県大塚国際美術館でシスティーナ歌舞伎。

大塚国際美術館は、世界の名作を、すべて原寸大で再現したという、意欲的な趣向の美術館。

システィーナ礼拝堂を再現した空間でおこなわれるのが、このシスティーナ歌舞伎である。


今回の演目は、新作の「主天童子」

もちろん、誤植では無い。

いわゆる「酒呑童子」伝説に、「主天」を重ね合わせたもの。


オープニング、天正遣欧使節がそのシスティーナ礼拝堂を訪れるシーンからはじまったのは面白い。

壱太郎さんの千々石ミゲル、吉太朗くんの中浦ジュリアンが特に良かった。

周りの西洋人が、16世紀の西洋人というよりはOSKみたいだな、と思っていたら、本当にOSKの女優さんたちだった(笑)


その後、島原の乱となり、天草ならぬ七草四郎時貞の登場。演じるのは愛之助さん。

この手のお役は、愛之助さんのまさしく得意とするところで、お客さんも大喜び。

ジュリアンの娘茨木(吉弥さん)とのコンビネーションが良い。


一命を取り留めた七草は、五島列島に流れ着き、そこで島の娘横笛(壱太郎さん)と出会う。

こういった役どころは、もう完全に壱太郎さんの手に入った感で、余裕すらうかがえる。

この横笛の父が、潜伏していた千々石ミゲルという、まさしく面白くなる展開。

千々石ミゲルはここで津嘉山正種さんに。

津嘉山さんは、モーゼのような、また俊寛僧都のようなたたずまいで、まさしくニン。

ただ、もったいなかったのは、歌舞伎独特の長台詞に少々困惑している様子。

上手い役者だけに、ここはいわゆる歌舞伎の長台詞にしなくてもとも思った。

また、津嘉山さんがこの場面の登場だけというのは、もったいないような。

後半に千々石ミゲルの亡霊として登場させてもと思った。

最後の天国のシーンで、ミゲルの懐に二人が抱かれるエンディングとかを勝手に想像していた。


後半は、傾城あり、大立ち回りあり、舞踊ありで、飽きさせない構成。

吉弥さんの傾城も良いし、壱太郎さんの鳥飼少将の「まろはまろでもまろはだか~」は笑った。

また、薪車さんの日本武者之助は、愛之助さんの敵役を見事に演じており、良いコンビだと思った。

種之助さんの又一も小悪党らしさをうまく表現していた。

そして、七草の役どころは、まさしく愛之助さんの得意とするところで、脚本の水口先生さすが!と思わせた。


ラストの天国での舞踊は、「深川マンボ」のようで楽しかった(笑)

壱太郎さんの「深川マンボ」を見てみたいと思った(笑)


踊りについては、今回、御宗家の振付が非常に素晴らしく楽しめた。

地方のお客様にもわかりやすい踊りで、歌舞伎初心者の方にも、素直に楽しんでいただける振付でありながら、しっかりと厚みのある、素晴らしい振付だった。


私の席は上手側で、ちょうど弦楽四重奏の演奏を間近で聴くことができた。

地元の弦楽四重奏をもってきているのは、非常に良いと思った。

松田幸恵さんの第二ヴァイオリンが良かった。

ただ、センターに花道を置くと、下手側の半分のお客様が「花外」のようになってしまっているような気がした。


色々書いたが、あの荘厳な雰囲気での歌舞伎公演は、是非とも続けてもらいたいと思った。